抄録
【目的】シロイヌナズナ( Arabidopsis thaliana )から単離された新規オキシリピンArabidopside A~Gは、傷害や感染応答に関与することが明らかになっている。一方、傷害や感染応答時には、膜脂質由来の不飽和脂肪酸から生合成されるC6化合物が直ちに放出され、植物の防御応答に関与することが報告されている。そこで本研究では、C6化合物がArabidopside類の生成に及ぼす影響について調べる目的で実験を行った。
【方法】4週間育てたシロイヌナズナ植物体を trans -2-hexenal等のC6化合物で処理し、植物体に含まれるArabidopside類の内生量をHPLCを用いて定量した。また、ジャスモン酸(JA)シグナリングおよび生合成酵素の欠損変異株についても同様の方法で内生量を比較した。
【結果】C6化合物処理したシロイヌナズナでは、Arabidopside類の内生量が急激に増加すること、C6化合物の構造の違いによって経時的な増減パターンが異なることが明らかとなった。また、変異体におけるArabidopside類の内生量を比較した結果、いくつかの欠損変異株ではArabidopside類が検出できなかった。本発表では、これらの結果とともにJAの生合成経路とArabidopside類の関連についても報告する。