日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第51回日本植物生理学会年会要旨集
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サイクリック電子伝達を制御する光化学系タンパク質超複合体(I)-生化学的解析-
*岩井 優和得津 隆太郎皆川 純
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p. 0199

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抄録
光化学系タンパク質複合体(PS)が光環境変化に適応するための機構の一つとして,ステート遷移が知られている.これまでに,我々はステート遷移の実態を明らかにするため,緑藻クラミドモナスを用いて,PSIの精製と生化学的解析を行い,LHCIIがステート2状態でPSIに結合していることを明らかにしてきた(PNAS, 2006年).本研究では,より無傷のタンパク質超複合体を得るため,界面活性剤トリデシルマルトシドを使い,ショ糖密度勾配による精製を試みた.その結果,得られた精製産物には,PSI, LHCI, LHCIIに加えて, Cyt b6f, FNR,そして PGRL1が含まれていることがウェスタンおよびMS解析により明らかになった.ゲルろ過などの解析によって,得られた精製産物が一つのタンパク質超複合体であることが示唆された.野生型の他,3種類の変異体(PSI-His変異体,PSI欠損株,Cyt b6f欠損株)の解析も,野生型でのタンパク質超複合体の存在を支持した.本研究で初めて結合が示されたCyt b6f, FNR, PGRL1は,サイクリック電子伝達に必須との報告があり,今回得られた新規タンパク質超複合体上においてサイクリック電子伝達が行われている可能性は高い.本演題では,この新規タンパク質超複合体の生化学的解析について報告し,次の演題でサイクリック電子伝達の活性測定について報告する.
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© 2010 日本植物生理学会
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