日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第51回日本植物生理学会年会要旨集
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過酸化水素処理がキュウリ子葉に及ぼす影響の解析
*島田 恵里池田 祥子山崎 聖司
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p. 0670

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抄録
環境ストレスにさらされると,植物体内では活性酸素が発生する。毒性の強い活性酸素は,植物を枯死させる原因となる。環境ストレスに対する植物の応答と耐性のメカニズムを解明するために,活性酸素の一種である過酸化水素がキュウリ子葉に及ぼす影響について解析を行った。4種類の濃度(1.0mM,10mM,100mM,1M)の過酸化水素を処理した結果,100mMと1Mの処理区で子葉表面に白い斑点が認められた。また,いずれの処理区でも,子葉表面に存在するトライコーム周辺の表皮細胞の肥大と核DNA量の増加が認められた。過酸化水素を処理した子葉では,トルイジンブルーOはトライコーム周辺の肥大した表皮細胞を特異的に染色するのに対して,トリパンブルーはトライコーム周辺の肥大した表皮細胞以外の表皮細胞を染色する傾向が強いことが明らかとなった。このことは,過酸化水素処理は,トライコーム周辺の表皮細胞にポリフェノール化合物を蓄積する一方で,それ以外の表皮細胞では細胞死を誘導することを示唆している。トライコーム周辺の表皮細胞は,それ以外の表皮細胞に比べて,環境ストレスに強いものと考えられる。トライコーム周辺の表皮細胞における,肥大,核DNA量の増加,およびポリフェノール化合物の蓄積とストレス耐性の関係についてさらに解析する必要がある。
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© 2010 日本植物生理学会
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