抄録
マメ科植物の根粒形成は、初期の根粒形成が後の根粒形成を抑制する負のフィードバック機構により制御されている。これは、根粒形成と維持に要するエネルギー消費が過度になると植物自身の生育を損なうからであり、実際、根粒を過剰形成するミヤコグサ共生変異体har1 では地上部の生育阻害が観察される。加えてこの制御は、根からシュート、シュートから根への遠距離シグナル伝達を介すると推測されている。接木実験から、HAR1はシュートで機能することが明らかになり、根からの根粒形成開始シグナルがHAR1を介して根粒形成抑制シグナルへと変換され、再び根に戻ると考えられている。これまで根粒過剰形成変異体は、har1 の他にシュート制御のklv, 根制御のtml が単離されている。
イオンビームで変異処理したミヤコグサMG-20由来の共生変異体3153は、野生型の約3倍多くの根粒を形成する。har1, klv, tml との相補性検定から、3153は新奇の根粒過剰形成変異体であり、接木実験から、tml 同様、根制御の根粒表現型を示すことが明らかになった。MG-20とのF2植物の表現型分離比は、野生型:3153型が137:43であったことから、3153は劣性一遺伝子支配と考えられる。GifuとのF2植物についてSSRマーカーを用いた連鎖解析を行ったところ、3153原因遺伝子座は第2染色体長腕にあることが判明した。