日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第51回日本植物生理学会年会要旨集
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αカロテンとその誘導体は全て同一の立体異性か?
*高市 真一村上 明男持丸 真里
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p. 0743

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抄録
αカロテンとその誘導体(ルテインやシフォナキサンチンなど)の存在は一部の光合成生物に限られている。αカロテンのε末端基と共役二重結合の間はC-6’がキラルなため(6’R)と(6’S)タイプを取り得るが、(6’R)タイプのみが報告されている。本研究ではこれらの点を検証するために、αカロテン類の分布を再検討し、単離精製して円偏光二色性あるいは核磁気共鳴分析より(6’R)か(6’S)タイプかを決定した。
αカロテン類の分布:真正紅藻、クリプト藻、ユーグレナ藻、クロララクニオン藻、プラシノ藻、緑藻、アオサ藻、車軸藻、陸上植物に分布は限られ、灰色藻、原始紅藻、不等毛植物、ハプト藻、渦鞭毛藻からは見つからなかった。
αカロテンの立体異性:全て(6’R)タイプであった。植物ではリコペンの右側がリコペンεシクラーゼによりε末端基に、左側がリコペンβシクラーゼによりβ末端基に変化してαカロテンが合成される。この2種類の酵素は相同性が高く、βシクラーゼからεシクラーゼができたと考えられている。反応としては環化するとき、H+が脱離する炭素とその方向によりβ、(6’R)ε、(6’S)ε末端基が作られる。これらを合わせるとεシクラーゼ側に(6’R)か(6’S)ε末端基を決める要因は無いと思われる。従って(6’R)タイプのみが存在することは、結合タンパク質側に立体異性を規制する要因があると思われる。
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© 2010 日本植物生理学会
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