抄録
イネのWRKY45は、BTHやプロベナゾールによる誘導抵抗性に必須の転写因子であり、WRKY45過剰発現イネは、いもち病および白葉枯病に高い抵抗性を示す。抵抗性反応に通常ともなう生育阻害が軽度であることなどから、その実用化が期待される。WRKY45の活性発現はプライミングによって制御されると考えられたが、過剰発現体の解析等から転写後または翻訳後制御の関与が推測されたため、その解析を行った。
mycタグWRKY45過剰発現株イネを作製し、抗myc抗体を用いて植物ホルモンや各種阻害剤に対するmyc-WRKY45タンパクの挙動の変化を調べた。その結果、プロテアソーム阻害剤MG132に特異的に応答してmyc-WRKY45タンパク量が増大した。抗ポリユビキン抗体を用いた免疫沈降実験により、myc-WRKY45がイネ細胞内でポリユビキチン化されることが確認された。タンパク合成阻害剤を用いた実験により、myc-WRKY45の半減期は1時間未満と推定された。以上により、WRKY45のユビキチン-プロテアソームによる分解制御が明らかになった。また、脱リン酸化処理およびMG132処理を組み合わせた実験により、特定部位のリン酸化とmyc-WRKY45の安定性がリンクしていることがわかり、WRKY45のユビキチン-プロテアソーム制御にリン酸化が関与していることが示唆された。