日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第51回日本植物生理学会年会要旨集
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ナノスケールでの植物プロテオミクス:新規シグナル応答因子の同定に向けた3つの応用例
*秋 利彦柳澤 修一
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p. S0009

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抄録
植物の新規シグナル応答因子の同定を目的とした、ナノフロー液体クロマトグラフィーとオンラインで接続されたイオントラップ型質量分析計(MS)を用いた3つのプロテオーム解析を紹介する。例1では、イネより調製した核及び核酸付随タンパク質のプロテオーム解析により、約150個のシグナル伝達あるいは応答に関与すると見られるタンパク質を同定した。これにより、植物だけでなく酵母や動物においても保存されており、また、グルコース応答性を示す2つのWD40タンパク質と1つのarmadillo/pumilioタンパク質を見出した。例2では、インセクトレーザー法により調製したイネ篩管液より3種類のFTファミリーに属するタンパク質を同定した。これらは長距離輸送型の新規シグナル伝達分子である可能性が示唆された。例3では、MS強度の比較による同位体標識を用いない新規な比較プロテオーム解析の系を確立した。この系を用いたイネの緑化過程の比較プロテオーム解析により、889個のタンパク質について相対量の変動を推定した。また、トランスクリプトーム解析の結果との比較により、緑化の過程で翻訳またはタンパク質分解レベルの制御を受けていると推定されるタンパク質も同定した。以上の結果をもとに、新規植物シグナル応答タンパク質のスクリーニングにおけるプロテオミクスの有用性について議論したい。
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© 2010 日本植物生理学会
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