抄録
26Sプロテアソームは選択的なタンパク質分解を担う巨大な細胞内装置であり、パートナーであるユビキチンと連携し、多様な生体反応を不可逆的に進める手段として様々な生命現象に不可欠な役割を果たしている。26Sプロテアソームは触媒部位である20Sプロテアソーム(CP)と活性調節部位19S複合体 (RP)が会合した約70個のサブユニットからなる多成分複合体である。近年、酵母を用いた解析や構造解析により、ユビキチン化タンパク質がどのようにプロテアソームにより分解されるか詳細な機構が明らかとなってきた。ユビキチン化タンパク質は複数のユビキチンレセプターによりプロテアソームに捕捉される。基質タンパク質部分はATPaseサブユニットにより解きほぐされ、20Sプロテアソーム内腔に送り込まれ分解される。その際ユビキチン鎖は脱ユビキチン化活性を有するサブユニットにより除去される。我々は試験管内において任意のタンパク質を異なる構造のユビキチン鎖で修飾する手法を確立し、26Sプロテアソームの各機能を解析した結果、いくつか新しい知見が得られたので報告したい。一方、26Sプロテアソームがどのように形成されるかというテーマも、タンパク質分解の完全性という視点からは非常に重要である。今回、19S RPの分子集合を支援するシャペロンタンパク質を同定し、19S RPの形成機構を明らかにしたので併せて報告したい。