抄録
オキナワモズクは沖縄原産の褐藻類であるが、藻体の前駆体である盤状体での大量培養が達成されており、光合成器官の研究には最適である。褐藻類のチラコイド膜では、主たる光合成アンテナタンパクであるフコキサンチンークロロフィルa/cタンパク(FCP)が光エネルギーを吸収し、光化学系I、IIへエネルギーを伝達する役割を担っている。珪藻由来のFCPについては生化学的・分光学的知見がここ数年で得られてきたが、褐藻類由来のFCPについては報告例が極めて少なく、その構造及びエネルギー伝達メカニズムは解明されていない。既に我々は、オキナワモズク盤状体からこのFCPを単離精製し、このモズクFCPが分子量17.5kDと18.2kDの二種類のサブユニットからなるホモかヘテロの三量体であることを決定した。一方、モズクFCPにクロロフィル(Chl) c1とChl c2が共に結合していることを発見し、結合する色素の化学量論比をフコキサンチン:Chl a : Chl c1 : Chl c2 = 5.5 : 4.5 : 1.1 : 1.0と決定した。本研究では、フェムト秒時間分解分光を用いてこのモズクFCPにおける励起エネルギー移動ダイナミクスを調べた。