日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第52回日本植物生理学会年会要旨集
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イネ細胞壁のL-アラビノフラノース残基は、植物の生長と生殖に関与する
*青原 勉古西 智之伊ヶ崎 知弘林 徳子宮崎 安将高橋 章廣近 洋彦岩井 宏暁佐藤 忍石井 忠
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p. 0522

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抄録
L-Arabinofuranose (L-Araf) は、植物細胞壁多糖であるペクチンやヘミセルロースに多く含まれる主要な構成単糖である。イネ科植物には、ヘミセルロースの一つであるアラビノキシランが多く含まれており、L-Arafは、大部分がアラビノキシランに由来すると考えられる。L-Araf残基は、UDP -L-Arafを基質として糖転移酵素により転移される。イネ細胞壁中のL-Arafの役割を調べるため、我々は、UDP -L-Arafの生合成に関与するUDP-L-Arabinopyranose mutase (UAM) に着目し、UAMの発現を制御した組換え植物を作出した。組換え植物のUAM発現量を定量的PCRで調べたところ、コントロールに比べて90%低下したものが得られた。これらの組換え植物では、UAM活性や細胞壁中のL-Arafの割合が減少していた。さらに、L-Arafが減少した組換え植物では、セルラーゼによる糖化効率が増加した。この結果は、アラビノキシランのL-Araf残基を介して形成される細胞壁ネットワークが異常になり、分解され易くなったことを示唆する。一方、L-Arafの減少は、矮性や不稔の性質を示すなど植物体の生長に大きく影響した。以上のことから、細胞壁中のL-Arafの減少は、細胞壁ネットワーク形成異常を引き起こし、植物全体の生長や生殖に影響すると予想される。
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© 2011 日本植物生理学会
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