抄録
オーキシンは植物の発生の様々な局面で機能する重要な植物ホルモンである。我々は陸上植物の形態形成におけるオーキシン機能の原形と進化に関与する知見を得ることを目的とし、基部陸上植物ゼニゴケにおけるオーキシン応答メカニズムの解明に向けた研究を進めている。ゼニゴケは、1 μM以上のオーキシンにより生長阻害を示すことが明らかとなっていることから、この生理応答を利用し200 Gyのγ線を照射することで変異を誘起したγ線照射胞子を用いて、10 μMの人工オーキシンnaphthaleneacetic acid (NAA) 含有培地上でも生育可能なオーキシン耐性株を7株単離した。単離したオーキシン耐性株は、一度確立したメリステムからの葉状体の形態形成に顕著な異常が認められないが、無性芽の発生に異常が観察された。雌株の耐性株においては造卵器が正常に形成されるが、野生株雄由来の精子との交配では胞子が形成されないという表現型を示した。一方、雄株の耐性株では精子が正常に形成され、野生型雌との交配で胞子が形成されることが明らかとなった。以上の結果と、大豆由来のオーキシン誘導性プロモーターGH3にβグルクロニダーゼ遺伝子 (GUS) を連結したGH3::GUS導入株を用いたオーキシン分布の観察結果と合わせて、ゼニゴケ形態形成におけるオーキシンの役割について考察する。