抄録
植物の光屈性や葉緑体光定位運動、気孔開口などに関わる青色光受容体フォトトロピン(phot)は、N末端側に光受容ドメインとしてFMNを結合したLOVドメイン(LOV1,LOV2)とC末端側にSer/Thrキナーゼを持つ。暗所においてLOV2がキナーゼ活性抑制ドメインとして機能している。青色光により光反応が引きおこされ、保存されたCys残基とFMNの間で一過的にアダクトを形成するとLOV2のJαヘリックスで構造変化が生じ、キナーゼ活性抑制が解除され、photの自己リン酸化や基質分子のリン酸化が起こると考えられている。シロイヌナズナの二つのホモログの一つであるphot1のLOV2について、構造モデルを基にFMNからJαヘリックスに至る分子内シグナル伝達経路として(1)イソアロキサジン環‐N476‐K475と(2)FMNのリン酸基‐R529‐E537を推定した。経路上の同アミノ酸残基に対してAlaを導入したLOV2-キナーゼペプチドを作成し、光反応、ペプチドマップによる構造変化、リン酸化活性測定を行った。経路(1)上の変異ペプチド(N476A,K475A)は野生型と同様な光反応と構造変化を示したが、キナーゼ活性を示さなかった。一方、経路(2)上の変異ペプチドは野生型と同様だった。FMN近傍の変化はN476‐K475を経由し、キナーゼ活性を制御することが示唆された。