抄録
植物の概日時計は、一般的に、明暗や温度などの同調因子により外的環境に同期する。我々は、ウキクサの概日時計システムの光パルスへの応答様式を、生物発光レポーター系の導入することで観測した。
1960年代にHillmanは、短日性植物であるアオウキクサの花成を指標にした骨格周期の実験を行った。その成果は、24時間暗期中2回の光パルスからなる同一骨格周期でも、最初の光パルスを受けるタイミングに応じて、光パルス間隔を夜または昼とみなす二重安定帯現象と解釈されてきた。実際に、概日時計の二重安定性は生物発光レポーター系を用いた概日遺伝子発現変動の測定により観察されている(伊藤‐三輪、小山)。一方で、概日時計システムの光パルスへの応答様式は、詳細な解析は進んでいない。我々は、概日発現遺伝子のプロモーターを持つ生物発光レポーター系を植物に導入することにより、暗期中の光パルスへの応答様式をリアルタイムで観測した。また、単一細胞における遺伝子発現測定系を用い、同一個体の複数の細胞について、概日発現遺伝子の光パルスに対する応答を観測した。加えて、RNAiによる発現抑制系を用いて、概日時計システムに異常がある場合の応答についても解析を行った。植物の概日時計の光への応答について考察を行ったので、ここに報告する。