抄録
植物は動物の自然免疫系と同様に、パターン認識受容体による微生物分子パターン(MAMPs)の認識を介して潜在的病原菌の感染を検出する能力を持っている。キチンは代表的な真菌由来のMAMPであり、われわれはこの認識に関わる受容体分子として現在までに、イネのGPIアンカー型タンパク質CEBiP、シロイヌナズナ・イネの受容体キナーゼCERK1/OsCERK1を同定している(1,2)。本研究ではシロイヌナズナにおいて、キチン認識機構に関わる可能性のある分子、特にCEBiP型分子に着目してその機能解析を行った。相同性解析より見出された3種のシロイヌナズナCEBiPホモログについて、タバコBY-2細胞を利用した発現系を利用してキチン結合性解析を行った。その結果、イネCEBiPと同様に高いキチン親和性を有するCEBiPホモログ(AtCEBiP1)を同定した。興味深いことにAtCEBiP1のノックアウト変異体では、キチン応答性にほとんど変化が認められなかった。この結果は、シロイヌナズナのキチン認識系においては、CEBiP型分子はキチン結合性をもつにもかかわらず、キチン応答に関与せず、CERK1が単独で受容体として機能する可能性を示唆している。
1)Kaku et al., PNAS 103, 11086 ('06)
2)Miya et al., PNAS 104, 19613 ('07)