日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第52回日本植物生理学会年会要旨集
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翻訳後修飾による葉緑体ATP合成酵素εサブユニットの量的制御
*星安 紗希吉田 和生上妻 馨梨深尾 陽一朗横田 明穂明石 欣也
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p. 0848

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抄録
植物は多くの環境ストレスにおいて余剰な光エネルギーに暴露される。葉緑体チラコイド膜の光化学装置は,過剰な光エネルギーを回避するために、環境に応答して光合成タンパク質の構成因子の活性や蓄積量が巧妙に調節されていると考えられているが,その全容については不明な点が多い。そこで強光乾燥ストレス耐性能が高い野生種スイカを用い、葉の膜画分のプロテオーム挙動を解析した。その結果、葉緑体ATP合成酵素εサブユニットは単一コピーの遺伝子にコードされているにも関わらず、分子量がほぼ同等で等電点が大きく異なる2分子種のεタンパク質が存在することを見出した。さらに、2分子種のεを分離精製しMS解析に供した結果、より酸性側の等電点を示すεにはN末端にアセチル基が付加していることが判明した。興味深いことに、乾燥ストレス下において、2分子種のうち、アセチル基修飾を受けていないεが優先的に分解することが示された。また、εを選択的に分解するメタロプロテアーゼ活性が、ストレス下の野生種スイカ葉抽出液から検出された。以上のことから、アセチル基の翻訳後修飾の有無により、メタロプロテアーゼに対するεの感受性を変化させることで、εの蓄積量を制御していることが示唆された。
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© 2011 日本植物生理学会
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