日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第52回日本植物生理学会年会要旨集
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トリテルペノイドの構造多様化をもたらす分子基盤の解明
*關 光村中 俊哉
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p. S0052

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抄録

植物が生産する多様なトリテルペノイドは、潜在的な医薬品資源として重要な化合物群である。マメ科植物はグリチルリチンやソヤサポニンなどβ-アミリンを共通の基本骨格に持つ多様なトリテルペノイドを生産する。その構造多様化には、炭素骨格の酸化修飾を担うシトクロムP450モノオキシゲナーゼ(P450)の寄与が大きいと考えられるが、植物P450は大きな遺伝子ファミリーを形成するため、トリテルペノイド生合成に関わるP450分子種の特定は容易ではない。マメ科の薬用植物カンゾウ(甘草)が生産するグリチルリチンは肝炎治療剤、天然甘味料として使用されるトリテルペノイド配糖体である。私たちは、カンゾウ地下茎ESTの解析から、CYP88D6(β-アミリン 11位酸化酵素)およびβ-アミリンの30位を酸化するCYP72AサブファミリーP450をグリチルリチン生合成酵素として同定した。また、マメ科タルウマゴヤシの遺伝子共発現解析により、β-アミリンの24位を酸化するCYP93E2、また、28位を酸化しオレアノール酸を生成するCYP716A12を特定した。以上、大規模遺伝子配列、発現情報の取得と候補P450の酵素機能解析によリ、異なるファミリーに属しβ-アミリンに対して異なる反応性を示す複数のP450がマメ科トリテルペノイドの構造多様化に寄与することを明らかにした。

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© 2011 日本植物生理学会
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