日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第52回日本植物生理学会年会要旨集
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転写因子WIND1は植物細胞の脱分化を制御する
*岩瀬 哲杉本 慶子高木 優
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p. S0068

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抄録
細胞の脱分化は、一度分化した体細胞がより低い分化状態に戻り、再び細胞増殖を再開する過程である。この現象は、多細胞生物で広く観られるが、その多くは傷害が引き金となっている。これには傷害部位を活発に分裂するより分化度の低い細胞で覆うことで傷を保護し、そこから新しく組織を再生するという生物学的な意義があると考えられている。植物細胞では、この過程に植物ホルモンであるオーキシンとサイトカイニンの濃度比が大きく影響を与えることが20世紀半ばに発見されている。以来、植物細胞の脱分化と再分化を制御する技術は基礎科学および応用科学分野で広く用いられて来たにもかかわらず、この過程の分子レベルでの解析はあまり進んでいない。我々はこれまでの研究から、転写因子WOUND- INDUCED DEDIFFERENTIATION 1 (WIND1)が、シロイヌナズナの脱分化に関与していることを発見した。WIND1は傷害部位において発現が促進し、不定形の細胞塊であるカルスの形成を促進する。面白いことにWIND1過剰発現体は培地に外生の植物ホルモンを添加しなくてもカルスを形成する上に、生じた細胞は脱分化状態を維持したまま継代培養が可能である。WIND1の機能とオーキシンおよびサイトカイニン応答の関連について報告する。
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© 2011 日本植物生理学会
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