2025 Volume 41 Issue 2 Pages 111-124
小児の胆道疾患は稀ながら日常診療で遭遇しうる重要領域である.中でも胆道閉鎖症と先天性胆道拡張症/膵・胆管合流異常症は画像診断の寄与が大きく,迅速かつ適切な診断が予後を左右する.本稿では,胆道閉鎖症における超音波検査のポイント,鑑別疾患,術後フォローの勘所などを総整理する.さらに,先天性胆道拡張症/膵・胆管合流異常症については,特徴的画像所見や合併症を中心に概説する.また,小児の膵腫瘍はその希少性から診断に苦慮することも少なくないが,圧倒的に充実性偽乳頭状腫瘍の頻度が高い.この腫瘍を重点的に概説して全体像を把握する.
近年の画像診断技術の進歩や症例の蓄積によって,これらの疾患の病態生理や診断プロセスは日々updateされている.本稿では最新の知見も踏まえながら,画像診断の“現在地”を総括する.
Pediatric biliary disorders are uncommon but clinically significant conditions in routine practice. Among these disorders, biliary atresia and congenital biliary dilatation with pancreaticobiliary maljunction are highly dependent on imaging for diagnosis, and a timely, accurate diagnosis is crucial for a favorable prognosis. This review synthesizes the key ultrasonographic features of biliary atresia and provides practical insights into differential diagnosis and postoperative surveillance. We also outline the characteristic imaging findings and complications of congenital biliary dilatation with pancreaticobiliary maljunction. Pediatric pancreatic tumors are rare and pose diagnostic challenges. Solid pseudopapillary neoplasm is the most common of these tumors, and therefore, we focus on imaging evaluation of this disease. Advances in imaging technology and accumulating clinical experience continue to refine the pathophysiologic understanding and diagnostic approach to this condition. In this review, we summarize the current state of pediatric biliary disorders and pancreatic tumors based on the latest evidence.
本邦での胆道閉鎖症ガイドラインは2018年に初版が刊行され,2024年に第2版が改訂された1).第2版では,クリニカルクエスチョン(CQ)の見直し,推奨度の改訂に加え,患者意向や医療経済的視点が反映されている.本稿では画像所見を中心に疾患概念や鑑別疾患を整理する.
2. 一般事項 1) 疾患概念胆道閉鎖症(biliary atresia; BA)は1万人出生に1人の頻度で,女児が男児より約2倍の頻度である.新生児期~乳児期早期に原因不明の硬化性炎症により肝外胆管が閉塞する疾患と定義されている1).未治療の場合,肝硬変や肝不全へと進行する.病因は諸説あるが未だ明確にはされていない.葛西手術(肝門部空腸吻合術)により一部は肝移植を回避できるが,予後には個人差が大きい.硬化性炎症の経過・治癒過程で線維化が生じることが知られており,予後不良例はそれが治療後も遷延,上行性に進行しているとも考えられるが,現状は推測の域を出ない.
2) 臨床像症状は生後2~3週頃に見られることが多く,遷延性黄疸・便色異常(淡黄色便や灰白色便)・淡黄色尿・肝腫大が一般的である.特に淡黄色便の新生児・乳児における精査については,ガイドライン初版では推奨なしであったが,第2版では行うことを強く推奨すると変更されている1).また,約4%は頭蓋内出血(ビタミンKの吸収障害による)で発症する.BAの約10~20%で種々の合併奇形が見られ,多脾症,十二指腸前門脈,下大静脈奇静脈連結,内臓逆位,先天性心疾患などが知られている.
3) 分類病型分類は閉鎖部位による基本型分類が一般的で,I型:総胆管閉鎖型,II型:肝管閉鎖型,III型:肝門部閉鎖型とされる2).I型の特殊型として,総胆管遠位が閉塞してその上部胆管が嚢胞状に拡張するI cyst型がある.III型が最も多く,全体の約85%を占める.
4) 治療治療は生後60日以内の葛西手術が推奨されている.また近年では,さらなる早期の生後30日以内の葛西手術の有用性が示唆されており,ガイドライン第2版でも行うことを強く推奨するとされ,エビデンスの強さも初版のC(弱:確信は限定的)からB(中:中程度の確信がある)へ上がっている1).
3. 画像所見BAの確定診断は手術による肉眼所見,直接胆道造影所見によってなされる.術前の早期診断において,重要な画像所見とポイントをまとめる.
1) 超音波検査臨床的にBAが疑われた際に,画像診断の中心となるのは超音波検査である.見るべきポイントは主に3つある.
①TC sign(triangular cord sign)BAでは胆管の硬化性炎症によって肝門部に線維性の結合織塊が形成され,手術時にもしばしば同定される.結合織塊は超音波で門脈横行枝の腹側に厚みのある帯状高エコー域として同定され,これがTC signである(Fig. 1).厚みは4 mm以上を有意とすることが多い3).BAは経時的に進行するので,もし3 mmでも目立つ場合には期間を空けて再検査が望ましい.また,硬化性炎症の進展により門脈に沿った高エコー域が末梢まで広がることがあり,periportal fibrosisとされている.TC signと紛らわしいものにperiportal edemaがあり(Fig. 2),肝炎などの肝障害,胆管炎,胆嚢炎,右心不全など様々な要因で見られる.鑑別としてperiportal edemaは門脈の腹・背側ともに見られ,辺縁は整(TC signやperiportal fibrosisは不整),門脈末梢枝までは広がりにくい,などがあるが実際は判断に悩む場合も多い.

肝門部で門脈左右枝の腹側に不整な高エコー域が見られ(➡),典型的なTC signの像である.

肝門部で門脈右枝の腹側・背側に辺縁整な高エコー域が見られ(➡),厚みは2 mmであった.
TC signは特異的な所見だが,例えば肝門部胆管が開存しているようなBAでは認められない.BAの硬化性炎症は必ずしも尾側→頭側へ上行するわけではなく,いずれのレベルにも認められることがあるため,所見のvariationが多彩である.
②胆嚢のサイズ形態と哺乳による収縮BAの胆嚢は非常に小さい,壁が不整などの特徴があり,超音波で同定できないこともある(Fig. 3).サイズは目安だが空腹時長径15 mm以下は小さいと判断する4).ただし,BAの約10%は正常胆嚢である.実際の検査では,まず4時間以上の絶食で胆嚢の形態異常があれば,BAを考慮する.次に哺乳してから1時間後に再観察し,胆嚢の収縮の有無を確認する.BAであれば胆汁を排泄できないため収縮は見られない.ただし,下部胆管が開存しているようなBAでは収縮が見られることもあるため,TC sign同様にBAの否定にはならない.いくつか検査のコツがある.

白色便があり,TC signは陰性だが胆嚢は長径5 mmで非常に小さい(➡).術中胆道造影でBAと診断された.
・絶食のため空腹で啼泣していることが多く,観察しにくい場合はミルクを哺乳させながら検査を行うのも一手である.
・哺乳から30分後では収縮しておらず,45分後では収縮しているような場合もあり,しっかりと1時間は間隔を空ける.
・収縮したか判断に悩む程度の変化であれば,疑いとして再検査を行う.
③腫瘍や胆石の落石など物理的閉塞をきたす疾患の除外脱水状態,長期絶食,心疾患,利尿剤使用などがある場合は,胆石や胆泥・debris貯留が超音波検査で偶発的に同定されることも実臨床では少なくない.
実臨床では①②どちらかのみBAを疑う所見であっても確定はできず,新生児肝炎なども鑑別となる(①は特異的だが,periportal edemaをTC signとしている可能性もある).①②ともにBAを疑う所見がなくても,完全な否定はできない.いずれにせよ臨床的に可能性を残す場合は,期間を空けて再検査を繰り返す.
その他にBAを疑う所見として肝動脈拡張,肝末梢側での血流増加などがある.近年ではエラストグラフィーを用いた肝硬度の評価に関する研究も散見される5).有用性が示されつつあるが,現時点では完全な指標とするには限界がある.
2) CT,MRICTは被ばくの観点からも,筆者の施設ではルーチンでは施行していない.また,MRI/MRCP(magnetic resonance cholangiopancreatography)では,新生児~乳児では空間分解能が低く,診断的価値は限定的である.胆管が全体に描出されればBAの可能性は低いが,BAの診断として特異度が高い検査とは言えない6).
3) 肝胆道シンチグラフィー99mTc-PMT(N-pyridoxyl-5-methyltryptophan)を用いた検査で,肝から胆道への核種の排泄(排泄されると消化管が描出される)を評価する.99mTc-PMTは肝摂取率が高い,肝から胆汁への移行が早い,尿中排泄率が低いという利点がある.正常では,静注から数分後に肝に集積し,10~15分後に胆嚢・総胆管,15~30分後に消化管への排泄が見られる.BAでは24時間後も消化管への排泄が見られないが(Fig. 4),新生児肝炎でも同様の所見となることがあり,やはり特異度が高い検査とは言えない.

(a)では核種が肝に集積するが(➡),消化管への排泄はほとんど認められない.多脾症(左側相同)を合併しており,肝は対称肝の形態である.
(b)胆嚢は非常に小さい(➡).
超音波でTC signは陰性であったが,術中胆道造影でBAと診断された.
非特異的な肝の炎症を指し,肝細胞・肝内胆管レベルで胆汁排泄障害が生じる.BAと初期症状が似ており鑑別が問題となるが,新生児肝炎に特異的な画像所見はない.Periportal edemaが見られることがあるが,時にTC signと紛らわしい.新生児肝炎でも胆嚢が小さく哺乳による収縮が見られない,肝胆道シンチグラフィーで消化管への排泄がはっきりしないこともある.つまり,画像もBAと似ることがある.実際は新生児肝炎であれば内科的治療で改善傾向となることが多いので,臨床像と対比しながら検査を繰り返してBAの所見が顕在化してこないかを追跡すべきである.
2) Alagille症候群肝内胆管の形成不全を特徴とする遺伝性疾患で,7万人に1人の頻度である.JAG1遺伝子やNotch2遺伝子の変異が見られる.主要徴候として肝異常(慢性肝内胆汁うっ滞),特徴的顔貌(広い額・深く窪んだ眼と眼間開離・尖った下顎・長く直線的な鼻など),心血管奇形(末梢性肺動脈狭窄など),椎骨奇形(蝶形椎体など),眼球異常(後部胎生環など)を認めるが,すべてが揃わない場合もある.その他にも中枢神経異常(脳動静脈の拡張蛇行,血管狭窄,動脈瘤,もやもや病,頭蓋内出血など),腎障害,発達遅滞なども見られることがある.
BAとの鑑別方法としては,主要徴候を捉えることである.椎体奇形は胸部単純写真で同定できることもあるので,必ず確認しておく(Fig. 5).Alagille症候群は一般的には外科治療の適応はなく対症療法となる.根治的には肝移植適応となるため,BAと正確に鑑別すべきである.

(a)灰白色便の精査での腹部超音波検査ではTC sign陰性であった.
(b)(c)胸部単純写真では椎体中央が凹んだ蝶形椎体が複数見られ(➡),心血管異常の精査目的に撮像されたCTではより明瞭に同定された(➡).
SLC25A13遺伝子異常による先天性のリンゴ酸・アスパラギン酸シャトル異常症である.遷延性黄疸,灰白色便,哺乳不良,体重増加不良,脂肪肝など多彩な臨床像を呈する.画像では脂肪肝が見られることがある程度で非特異的である.BAが臨床的に除外されれば,鑑別に残る.なお,シトリン欠損症には思春期以降に発症する成人発症II型シトルリン血症(adult-onset type 2 citrullinemia; CTLN2)というもう一つの臨床型がある.NICCDの後,多くは1歳頃に肝機能などが正常化し,見かけ上は異常のない適応・代償期を経てCTLN2を発症する.
4) 進行性家族性肝内胆汁うっ滞症(progressive familial intrahepatic cholestasis; PFIC)乳児期に発症し,常染色体潜性遺伝形式をとる家族性の肝内胆汁うっ滞症である.かつては遺伝子変異により1~3型が知られていたが,近年では4~12型まで確認されている.乳児期から肝脾腫や著明な瘙痒感を呈して進行性の経過をとるが,PFIC1では下痢,膵機能不全,難聴など肝外症状を合併するのに対し,PFIC2では症状が肝に限局する一方で早期に肝不全が進行し,時に肝細胞癌を発症する.PFIC3以降は本邦では非常に稀である.PFIC1,PFIC2はγ-GTPが正常にもかかわらず著明な直接型ビリルビン高値をきたす点が特徴である.画像診断において特異的な所見はなく,やはりBAの除外が重要となる.
5) 先天性胆道拡張症(Fig. 6)
(a)MRCPでは総胆管の嚢腫状拡張があり(➡),先天性胆道拡張症を思わせる.胆嚢はやや歪な形態である(▲).
(b)経過観察途中で以前にはなかったTC signが出現してきた(➡).
(c)術中胆道造影では十二指腸へ造影剤の排泄はなく,嚢腫下端の下部総胆管は閉塞(➡).左右肝管より上流は枯れ枝,雲状であり(▲),左右肝管レベルでも閉塞していると考えられた.
詳細は後述する.
5. 治療と術後経過BAの疑いがある場合には試験開腹により,もしくは腹腔鏡下に直接胆道造影を行い,診断が確定すればそのまま葛西手術を施行する.なお,ガイドライン第2版では腹腔鏡手術の有用性を問うCQが追加されており,癒着軽減など腹腔鏡のメリットはあるものの,現時点では推奨なしと記載されている1).
術後の経過観察において評価すべき項目を以下に解説する.
①Periportal fibrosisと門脈径狭小化葛西手術後も炎症が遷延し,periportal fibrosisが進行する症例があり,予後不良である.それに伴って門脈径も狭小化し,血流が低下する.超音波ではこれらの変化を経時的に評価する.検査の間隔が短いと,前回と著変なしというレポートが繰り返されることとなるので,術直後など過去の画像とも比較が必要である.
②Bile lakeの有無Bile lakeは胆管から漏れ出した胆汁の貯留腔であり,門脈沿いに見られる.経過観察で偶然発見されることも多く,その後のサイズ変化が乏しいこともある.Bile lakeに感染が生じると,嚢胞内のエコー輝度が上昇する.誤解されやすいが,bile lake=活動性胆管炎とは限らない.BA術後では肝内胆管にも閉塞が及んでいることが多く,そこには側副路のように細胆管(正常胆管より細く脆弱で機能も未熟)が増生している.BA術後では上行性胆管炎をしばしば生じるが,軽微な炎症でも細胆管は胆汁排泄ができなくなり,容易に破綻すると推測される.それによってbile lakeが形成されるため,この所見は結果を見ているに過ぎない.BA術後の発熱で,胆管炎であれば門脈周囲の浮腫(≠periportal fibrosis)が高エコーとして目立ち,炎症が門脈に波及して相対的に肝動脈血流が増加するが,評価はしばしば難しい.臨床像や採血データなどで総合的な判断が必要である.Bile lakeがあるから発熱の原因は胆管炎だと安易に決めつけてはいけない.
③肝内胆管拡張や肝内結石の有無葛西手術後に胆汁うっ滞による肝内胆管拡張が見られることがあり(おそらく閉塞を免れた胆管の拡張),頻度は3.1~36.4%と記載がある1).胆管拡張自体が胆管炎のリスクとなり,時に外科的ドレナージがなされる.肝内結石の頻度は2.0~23.8%と記載がある1).
④肝硬変,門脈圧亢進の有無術後の予後不良例では肝硬変へと進行していく.門脈圧亢進があれば,脾腫,消化管静脈瘤,肝肺症候群など様々な合併症が生じ得る.消化管静脈瘤や血行動態の評価でCTが撮像されることもある.
先天性胆道拡張症(congenital biliary dilatation; CBD)は先天的に胆管拡張をきたす疾患であり,戸谷分類が広く知られている7).膵・胆管合流異常症(pancreaticobiliary maljunction; PBM)は,本来であれば十二指腸乳頭部(Oddi括約筋)内で合流する胆管と膵管が,十二指腸壁外で一本の管として合流した先天的な形態異常であり,胆汁と膵液の流出障害や相互逆流が生じる.PBMでは胆管拡張を伴わないものもある.
狭義のCBDは総胆管を含む肝外胆管が限局性に拡張し(肝内胆管拡張を伴う場合もある),全例にPBMを合併し,戸谷分類ではIa型・Ic型・IV-A型に相当する(Fig. 7).2024年に刊行された膵・胆管合流異常/先天性胆道拡張症診療ガイドライン改訂第2版8)でも定義されており,本稿でもこの狭義のCBDについてPBMと併せて述べる.

緑部が拡張部(文献7を参考に作図).
CBDは東アジア(特に日本)に多く,男女比は1:3で女児に多い.古典的三主徴は腹痛,黄疸,腹部腫瘤だが,すべてが揃う症例は少ない.乳児期には黄疸で,幼児期以降は反復する腹痛,嘔吐,発熱で発症することが多い.PBMにより膵液と胆汁の反応により形成される蛋白栓は非常に脆く,自然に縮小・排泄されるため,蛋白栓による胆道閉塞の症状は間欠的となりやすい.血液検査では肝胆道系酵素上昇やアミラーゼ上昇(蛋白栓による胆管内圧上昇によって,膵液内のアミラーゼが血中に漏れ出る)が見られる.臨床像や血液検査が膵炎と似るため注意が必要である.
3) 治療治療は肝外胆管全切除+胆嚢摘出+胆道再建である.胆道再建はガイドラインではRoux-en-Y肝管空腸吻合術が推奨されている8).PBMの胆管拡張型は胆管癌,胆管非拡張型は胆嚢癌のリスクであり,外科的手術が推奨される.胆管非拡張型のPBMの治療は胆嚢摘出であり,肝外胆管切除まで施行するかについてはさまざまな意見がある.
2. 画像所見いずれのモダリティーでも評価する項目は概ね同じであり,ここでは画像所見別に解説する.
1) 総胆管拡張胆管の「限局性」拡張がポイントで,拡張部と非拡張部がはっきりと区別できることが多い.超音波検査による年齢別基準値(Table 1)9)を参考にしつつも,その形態評価を重視する.結石などによる閉塞での二次性拡張と鑑別を要するが,以下のような特徴がCBDでは見られる(Fig. 8).
| 年齢 | 基準値(mm) | 上限値(mm) | 拡張の診断(mm以上) |
|---|---|---|---|
| 0歳 | 1.5 | 3.0 | 3.1 |
| 1歳 | 1.7 | 3.2 | 3.3 |
| 2歳 | 1.9 | 3.3 | 3.4 |
| 3歳 | 2.1 | 3.5 | 3.6 |
| 4歳 | 2.3 | 3.7 | 3.8 |
| 5歳 | 2.4 | 3.9 | 4.0 |
| 6歳 | 2.5 | 4.0 | 4.1 |
| 7歳 | 2.7 | 4.2 | 4.3 |
| 8歳 | 2.9 | 4.3 | 4.4 |
| 9歳 | 3.1 | 4.4 | 4.5 |
| 10歳 | 3.2 | 4.5 | 4.6 |
| 11歳 | 3.3 | 4.6 | 4.7 |
| 12歳 | 3.4 | 4.7 | 4.8 |
| 13歳 | 3.5 | 4.8 | 4.9 |
| 14歳 | 3.6 | 4.9 | 5.0 |
| 15歳 | 3.7 | 5.0 | 5.1 |
| 16歳 | 3.7 | 5.1 | 5.2 |
| 17歳 | 3.7 | 5.2 | 5.3 |
| 18歳 | 3.8 | 5.3 | 5.4 |
| 19歳 | 3.8 | 5.4 | 5.5 |
| 20歳代 | 3.9 | 5.9 | 6.0 |
| 30歳代 | 3.9 | 6.3 | 6.4 |
| 40歳代 | 4.3 | 6.7 | 6.8 |
| 50歳代 | 4.6 | 7.2 | 7.3 |
| 60歳代 | 4.9 | 7.7 | 7.8 |
| 70歳代以上 | 5.3 | 8.5 | 8.6 |

(a)11か月女児 CBD IV-A (b)4か月女児 CBD IV-A
(a)総胆管~総肝管の拡張があり,3管合流部に拡張が及んでおり,胆嚢管起始部も拡張している.胆嚢の拡張はない.
肝内胆管にも拡張が及ぶ.上流の拡張は限局しており,突然正常径となっている(赤➡).
(b)右上腹部の巨大嚢胞構造(※)は拡張した肝内胆管(➡)と連続している.CBDは時に巨大嚢胞として見られる.
①胆管拡張が肝内に及ぶ場合も,拡張範囲は限局しており,拡張胆管の上流が突然正常径となる.
②肝内胆管拡張がある場合は,肝門部に相対的狭窄が見られる.狭窄部には正常胆管が介在するためとされている.
③総胆管拡張が3管合流部より上流に及ぶと,胆嚢管起始部も拡張するが,胆嚢は拡張しない.
これらは参考にはなるが,筆者の経験的には常に見られるわけでもない(例えば③で胆嚢が拡張している症例もある).
また,総胆管拡張は時に巨大嚢胞のように見えることもあり(Fig. 8),胆管との連続性を確認する必要がある.胎児期に肝門部の巨大嚢胞として発見されることもある.
2) 膵・胆管合流異常(Fig. 9)
(a)Thin sliceでの腹部造影CTでは拡張した総胆管だけでなく,拡張がない主膵管も視認できる.共通管も明瞭でかなり長い.PBMと考えられる.
(b)拡張した総胆管内の背側にやや高エコーの構造物があり(➡),蛋白栓と思われる.Acoustic shadowはあまり目立たない.
十二指腸壁外で膵管と胆管が合流した共通管を同定する.共通管は15 mm以上であればPBMと診断されるが,明確な基準はない.また,Oddi括約筋の収縮の有無によって共通管の描出像は異なるとされており,画像での共通管長は一定ではない.共通管の途中でnotchと呼ばれるくびれ(乳頭部括約筋が作用する部位で細くなる)が見られることがあり,共通管が短い場合に参考になる.
総胆管拡張の有無に関わらず,PBMがあると胆嚢・胆管壁が過形成や化生性変化により肥厚することがあり,超音波で壁内側が低エコーとなる(Fig. 10).同定されればPBMを疑う有用な所見である.MRI/MRCPは成人では第一に行われる検査だが,小児では体格が小さくMRIの空間分解能では明瞭に描出できないこともある.被ばくのデメリットはあるが,造影CT thin slice画像は空間分解能が高く有用である(Fig. 9).他には,DIC-CT(drip infusion cholecystocholangiography-CT),内視鏡的逆行性胆管膵管造影(endo-scopic retrograde cholangiopancreatography; ERCP)なども有用ではあるが,小児でどこまで施行すべきかは議論がある.

(a)超音波では総胆管の拡張と壁肥厚が見られる(➡).
(b)胆嚢の拡張はないが,壁肥厚が目立つ.壁の内側がやや低エコーである(黄➡).小さな蛋白栓も見られる(赤➡).
拡張胆管内の蛋白栓についても評価する.蛋白栓は結石ほどには超音波で高エコー・CTで高吸収とはならないので,注意が必要である(Fig. 9).
術前では,右肝動脈が胆管腹側を走行する破格の有無を評価しておく.この破格は10~20%程度で見られるとされ,肝管空腸吻合部が術後に右肝動脈の圧排により狭窄することがあるため,右肝動脈が総肝管の背側となるよう手術を行う必要がある.
3. 鑑別疾患 1) BABAの一部では,肝門部に嚢胞様構造が認められることがある.これは閉塞胆管の先端部が嚢胞状に拡張したものである.また,BAの進行途中で閉塞した胆管の上流に胆汁がトラップされ,嚢腫状に拡張することがある(Fig. 6).これらはCBDと紛らわしいことがある.PBMの有無の評価や,経過でBAに特徴的な所見が顕在化してこないかを追跡する必要がある.稀に胎児期から肝門部嚢胞の像を呈するBAの報告があるが,詳細な病態は解明されておらず,出生前でのCBDとの鑑別は困難である.
2) 総胆管の物理的閉塞・狭窄主に結石,debris,腫瘍などによって生じる.時にPBMによる蛋白栓なのか,その他の原因による結石・debrisなのか判断に迷う.PBMそのものの有無を評価することに加え,結石・debrisなどが生じうる背景があるかを検討する必要がある.前述したように,CBDであれば限局性の胆管拡張であるのに対し,物理的閉塞・狭窄であれば胆管拡張が肝内上流まで長く,緩やかに広がっていくことがあり,鑑別の際に参考になる.
4. 合併症 1) 胆道穿孔CBDの稀な合併症であり,胆汁性腹膜炎が生じる.PBMにより膵液の胆管内への逆流と,それに伴う胆管壁の荒廃,胆道内圧の上昇が原因とされている.多くは4歳までに発生し,これは胆管壁の未熟性が関与しているとされている10).穿孔部位は3管合流部の前面に認められることが多い.
画像所見は総胆管拡張+大量腹水が見られる.CBDでは穿孔しても総胆管が虚脱しないことが多いので,原因不明の大量腹水や腹膜炎を見た場合は総胆管を確認すると良い.ただし,総胆管拡張が軽度でも穿孔は生じうるので注意が必要である.超音波で腹水に隔壁やdebris様のエコー輝度が見られることもある.非常に稀に総胆管後面から後腹膜方向へ穿孔し,腹水が少なく膵炎様の所見が主体となることがあり,鑑別に難渋する.総胆管の状態,膵腫大の有無,超音波での液体性状の把握などが参考になる.
2) 急性膵炎CBDでは蛋白栓が乳頭部へ嵌頓することで胆道内圧が上昇し,感染胆汁や活性化膵酵素が膵管内へ逆流することで急性膵炎を発症する.PBMそのものが膵炎のリスクであり,胆管拡張がない場合でも生じ得る.小児で原因不明の膵炎をみた場合にはPBMの有無を検索する必要がある.
ただし,小児のPBMに伴う膵炎では膵腫大が見られるのは10%以下である.腹痛+高アミラーゼ血症などで臨床的に膵炎と診断される場合も,画像では膵炎の所見が乏しいことがある.これは膵液や胆汁うっ滞による膵管・胆管内圧上昇による腹痛+胆道に逆流した膵酵素が血中に移行する(cholangio-venous reflux)ことで生じる高アミラーゼ血症を見ているとされる11).CBDやPBMに合併した膵炎と報告されている症例には,このような膵腫大がない膵炎様の症状を指しているものが多いと思われる.
3) 肝内結石胆管切除後の7~8%,術後数年以上してから発生することが多い.多くは戸谷分類IV-A型の術後で発生する.肝内拡張胆管でうっ滞する胆汁へ,βグルクロニダーゼ産生腸内細菌が流入することでビリルビンカルシウム結石が生成されるためである.成人では戸谷分類IV-A型の肝内拡張胆管を肝切除も併せて積極的に施行する例もあるが,小児では過大侵襲とされ肝内拡張胆管は残存することが多く,結石発生の要因となる.また,肝門部近傍の胆管には先天的狭窄(膜様,索状の2タイプある)が多く,術中その処理がどこまでできるかも重要とされている11).肝内結石は難治性胆管炎の原因となり,臨床的には非常に重要である.画像では,この結石はカルシウム成分が少ないため超音波でacoustic shadowが目立ちにくく,CTでは明瞭な高吸収とならないことが多いため,注意深く読影する必要がある.MRIではT1強調像で高信号となることが多い.
4) 胆道癌胆管切除後に遺残胆管癌が発生することがある.これは,胆管切除がなされていても,一般人よりも高頻度である.肝内胆管,肝門部胆管,膵内胆管いずれでも発生し得る.小児期での発生は稀だが,長期的な経過観察が必要となる.
小児の膵腫瘍は極めて稀であり,全小児がんの0.1%未満とされる.2000年から2020年の間に小児膵悪性腫瘍の発生率が年率9.9%で増加しているという報告12)もあるが,これは疾患の真の増加だけでなく,近年の診断技術の進歩や分子分類の役割が大きく寄与していると思われる.
ある報告では,本邦において2000年~2021年の22年間で集計された213例の小児膵腫瘍の内訳は充実性偽乳頭状腫瘍が164例(77.0%)と圧倒的に多く,次いで膵芽腫16例(7.5%),膵神経内分泌腫瘍14例(6.6%),非上皮性腫瘍9例(4.2%),膵癌7例(3.3%),転移性腫瘍3例(1.4%)であった13).小児の膵腫瘍といえば,まずは充実性偽乳頭状腫瘍といってもよい.以下,充実性偽乳頭状腫瘍を中心に解説する.
2. 充実性偽乳頭状腫瘍(solid pseudopapillary neoplasm; SPN) 1) 一般事項小児膵腫瘍の大部分を占める低悪性度腫瘍であり,若年女性(10~30歳代)に好発する.約90%が女性に発生する.ただし,10歳以下での発生や男性発生もある.局在は膵尾部に多いが,小児では成人よりも膵頭部発生率が高いともされている.日本を含むアジア地域での報告数が多い.
増大は緩徐で,無症状で偶発的に発見されることも多い.外傷を契機に発見される例もある.血清アミラーゼ値や腫瘍マーカー(CEA,CA19-9,CA125など)は正常のことが多く,有用性は低い.予後良好だが,稀に肝転移,リンパ節転移,腹膜播種を認める.10年以上経過してから再発する場合もあり,あくまで低悪性度腫瘍として認識しておくべきである.
2) 病理所見画像所見の理解のため有用であるので,簡単に述べる.
SPNは由来細胞がはっきりしない,分化方向不明の上皮性腫瘍とされている.腫瘍細胞の細胞接着性が弱く,脆いというのがポイントである.腫瘍細胞がバラバラになりやすく(これは通常は間葉系腫瘍の特徴だが,SPNは上皮性腫瘍でありながらこの性質をもつ),血管から遠い腫瘍細胞が変性・出血する.これにより嚢胞変性や石灰化も生じる.不規則に腫瘍細胞が脱落した後に残された腫瘍塊が乳頭状に見えるため,偽乳頭状と呼ばれる.
腫瘍辺縁で変性や出血が強い場合や腫瘍が大きい場合は,辺縁に線維性被膜を形成することがあり,画像にもそれが反映される.腫瘍辺縁では膵組織に不規則な進展が見られることがあるが,通常の悪性腫瘍浸潤で見られる免疫細胞浸潤やdesmoplastic reaction(腫瘍に破壊された組織の線維化)は見られないことが多く,一般的な浸潤とは必ずしもみなされない.
3) 画像所見(Fig. 11, 12)
背中を強打し,翌日から腹痛が出現.
(a)膵尾部腫瘤はT1強調像で内部不均一だが高信号が目立ち,出血が示唆される(➡).
(b)辺縁に低信号のrimが認められる(➡).内部は低信号,高信号が混在している.
(c)辺縁の線維性被膜に造影増強が見られる(➡).内腔は造影効果が乏しく,血腫成分が主体と思われる.

腹痛,嘔吐を主訴に受診.
(a)膵頭部腫瘤はT1強調像で内部不均一だが高信号域も散見され,出血が示唆される(➡).
(b)辺縁に低信号のrimが認められる(➡).内部は低信号,高信号が混在している.
(c)腫瘤辺縁の線維性被膜に造影増強が見られる(黄➡).主膵管の拡張を伴っている(赤➡).腫瘤周囲にはfluid貯留が見られた(▲).
主膵管拡張や周囲fluid貯留はSPNではあまり見られない所見であり,他の腫瘍も鑑別にはあがったが,手術結果はやはりSPNであった.典型と言えない所見がいくつかあっても,やはり小児膵腫瘍ではSPNを考慮する.
SPNは比較的大きく(2.5~10 cm程度),嚢胞変性や出血を高頻度で伴い,一見すると嚢胞性腫瘤のように見えることも多い.石灰化も伴うことがある(30%程度,辺縁に多いが全体に見られることもある).線維性被膜も高頻度(80%程度)で見られる.充実成分は造影で漸増性に濃染する.
MRIで出血信号はT1強調像で高信号となることが多いが,時相も様々で実際は多彩である.Chemical shift imagingでのopposed phase→in phaseでの信号低下があればヘモジデリン沈着が示唆され,出血を評価しやすい.線維性被膜はT2強調像で低信号のrimとなる.FDG-PETでは充実成分の集積が高いことが多く,幅は広いがSUVmaxは10を超えることもある.
病理所見でも述べたが,SPNは周囲組織を圧排するが真の浸潤は稀であり,主膵管や胆管の閉塞・拡張は見られないことが多い.また,脆い腫瘍であるため軽微な外傷で出血することがあり,腫瘤状の外傷性膵血腫のような像であればSPNも考慮すべきである.
上記のように特徴はあるが,実際は小さいものや,均一な充実性腫瘍,ほとんどが嚢胞成分の腫瘍など多彩である.とにかく小児で膵腫瘍をみたら,いかなる像でもまずはSPNを検討すべきである.
3. 膵芽腫(pancreatoblastoma) 1) 一般事項小児悪性腫瘍全体の0.15%と極めて稀である.好発年齢は5歳前後で,男児にやや多い.局在は膵頭部,膵体部に多い.約25~50%にBeckwith-Wiedemann症候群合併が見られる.家族性大腸腺腫症(familial adenomatous polyposis; FAP)との関連も知られている.血中αフェトプロテイン(AFP)が高値となることが多い.巨大腫瘤となることが多いが,閉塞性黄疸をきたす頻度は高くない.組織学的には膵腺房細胞の胎生期細胞の遺残から発生する上皮性腫瘍である.初回診断時の15~35%に肝転移やリンパ節転移が見られる.転移性病変がなく外科的に完全切除されれば予後良好であるが,局所再発や異時性転移も見られることがある.
2) 画像所見(Fig. 13)
国立成育医療研究センター放射線診療部 宮嵜 治先生のご厚意による.
(a)膵頭部の腫瘍内に石灰化が見られ(➡),一部は塊状である(▲).
(b)内部は不均一に造影され,嚢胞変性も伴う(➡).
(c)腫瘍内は嚢胞変性などを示唆する高信号も見られ,充実部は肝より軽度高信号である(➡).
なお,充実部のADC値はかなり低値(0.675 × 10−3 mm2/s)であった(非提示).
巨大な充実成分・嚢胞成分の混在した内部不均一な腫瘤であり,内部に粗大な石灰化(塊状あるいは曲線状)を伴うこともある.MRIでは被膜をもつ分葉状腫瘤で,内部に嚢胞や出血などが混在した不均一な信号を呈するが非特異的である.充実部の造影効果はそこまで強くないことが多い.
最大の鑑別はSPNになる.SPNよりも膵芽腫を疑う所見として,充実部のADC(apparent diffusion coefficient)値が低い,低年齢(5歳以下),血清AFP高値,腫瘍内出血がない,周囲血管浸潤,遠隔転移などがある14).ただし,膵芽腫は極めて稀なため,統計学的な有意性を厳密に評価することは困難であり,参考程度に留めておく方が良い.
4. 膵神経内分泌腫瘍(pancreatic neuroendocrine neoplasm; PanNEN) 1) 一般事項PanNENは高分化腫瘍であるNET(neuroendocrine tumor)と低分化腫瘍であるNEC(neuroendocrine carcinoma)に分類され,NETはホルモン産生の有無により機能性と非機能性に大別される.小児のPanNENでは機能性NETが多く,中でもインスリノーマ,ガストリノーマの頻度が高い.遺伝的素因として多発性内分泌腫瘍症(MEN1型)との関連が約5%に認められる.その他,von Hippel-Lindau病(vHL),神経線維腫症1型(neurofibromatosis type1; NF-1),結節性硬化症などでも関連が知られている.
2) 画像所見境界明瞭で,膵実質よりも強く造影される多血性腫瘍であることが多い.CTでは典型的には,造影早期から強く濃染し,門脈相~平衡相まで造影効果が遷延する.内部均一に濃染することが多いが,サイズが大きくなると内部壊死や変性により不均一な造影効果となる.転移巣も多血性で,同様の画像所見を呈する.
5. 転移性膵腫瘍・二次性膵腫瘍 1) 一般事項小児では固形腫瘍の既往がある場合に,稀に膵転移をきたす.多くは他臓器にも転移を伴っていることが多い.小児では神経芽腫や横紋筋肉腫などで見られることがある.白血病やリンパ腫の既往がある場合は,二次性に膵にもinvolvementが見られ,腫瘤を形成することがある.
2) 画像所見いずれも特異的なものはないが,サイズが小さく,比較的均一な性状のことが多い.特にリンパ腫の膵病変では,主膵管や胆管に接しながらも閉塞はきたさないというリンパ腫らしい特徴が見られる.