本研究では, ERS-1 SARデータによる草地管理状況の把握が可能であるか検討した。ここでは, 耕起・再播種を行う草地更新と牧草収穫の現状がERS-1 SARによって捉えられるかどうかをLandsat TMをスクリーンデジタイジングして得た圃場図を併用した方法で調べた。その結果, ERS-1 SARデータでは草地更新後の草地がそれ以外の草地と比べて, 高い後方散乱係数を示すことが分かった。これは耕起に伴い草地地表面の粗度が大きくなることと耕起後に反転された下層土壌の高い土壌水分含量に起因するものと考えられた。また, ERS-1 SARデータを利用して作成した草地更新の現状を示すマップはLandsat TMを利用して作成したものと高い割合で一致した。一方, バイオマスの変化を伴う牧草収穫状況はERS-1 SARデータでは捉えることができなかった。草地生産力の回復を目的として行われる草地更新は草地管理上, 重要な作業である。概して晴天率の低い日本の草地酪農地帯において, 全天候型の衛星SARによって草地更新の実態が捉えられる可能性が示唆されたことは非常に有用である。