2006 年 1 巻 1 号 p. 105-110
Oxford大学で作られている「患者の語り」のデータベースDIPEx (Database of Individual Patient Experiences) は1,000人を超える患者のインタビューを収録したデータベースである. その一部はインターネットを介して一般に公開されており, 患者や家族, そして医療提供者がビデオ映像を通して様々な疾患の患者の「病 (やまい) 」経験に触れることができる. このデータベースからは優れた質的研究の学術論文が生み出され, さらにそのデータを2次利用することにより量的な研究も可能である. 我が国ではNBM (Narrative-based Medicine) をEBM (Evidence-based Medicine) の対抗概念と捉える傾向があるが, DIPExを作ったのが英国EBMをリードしてきた人々であることを考えると, EBMとNBMを「量 vs 質」の二項対立として捉えることが誤りであることがわかってくる. 現在, 日本版DIPExの設立を目指し準備が始まっている.