抄録
我が国における盲導犬の慢性的不足は、社会文化的背景を含め種々の要因が関与すると思われるが、育種・繁殖学的見地からは、その極めて特徴的な育成システムが盲導犬不足を助長する要因のひとつであると考えられる。すなわち、盲導犬は雌雄ともに避妊・去勢を受けた後に訓練を開始するために、優秀な盲導犬であってもその遺伝子を繁殖によって次世代に伝える術がない。この育成システムは、優秀な遺伝子を廃棄することに等しく、育種の概念に逆行するものと思われる。最近、この問題を克服すべく、生殖工学の応用による盲導犬の人工繁殖技術の開発、そして、その効果を最大限に発揮させるための、盲導犬のDNAレベルにおける適性評価系ならびに遺伝子資源バンクの構築が試みられている。