抄録
筆者は児童館などでメディアと遊びをテーマにした展覧会に参加してきた。この展覧会を通して、デジタルメディアの特徴を旧来からある子どもの遊びを拡張するために用いるという手法を用いてきた。この手法を応用し、発達障害、中でも自閉症の経験を追体験するためにデジタルメディアを活用するという方法へと発展させた。そこで筆者は自閉症という状況を、定型発達の人に追体験してもらうという方法が、定型発達の人にとって自閉症を理解するきっかけとなるだけではなく、自閉症という状況の可能性を知ることで、定型発達の世界認識を拡張するメディアの開発に繋がると考えた。こうした考察を踏まえ、定型発達の成人の能力拡張のためにデジタルメディアを活用するというヒューマンエンハンスメントが目指す大きな方向性以外に、発達の様々な段階や状況がもたらす世界認識の方法を人々が相互に取り入れ、拡張し合うためにデジタルメディアを活用するヒューマンエンハンスメントのアナザーモデルを提案したい。