1998 年 47 巻 47 号 p. 55-70
中国大陸の湖から採取した二つのコアにおける放射性核種の分布と化学組成とを調べ, 平均堆積速度の算出を行い堆積環境について予察的に検討した. その結果, 構造盆地湖である Daihai 湖では約0.3cm/y程度の堆積速度が推定され, この値は日本における湖沼の平均堆積速度の範囲内であった. 化学組成からは, 堆積物の供給源が異動してコアの化学組成にわずかな変動をもたらしたことが示唆された. また, 湿地帯の閉鎖湖である Blackspring 湖では約0.1cm/yで, 前者の1/3程度の値であった. 含水比や化学組成に変化がみられた16~18cmあたりは160~180年前と推定され, そのころから以前と異なる堆積物が供給され始めた可能性が高い. また, セシウム-137のインベントリーは, 日本における過剰鉛-210との関係から推定されるものよりも大きく, これは中国におけるセシウム-137の供給量が日本における場合よりも多かったこと, ならびに湖からの流出が少なかったことなどが原因と考えられる.