堆積学研究
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紀伊半島四万十累帯白亜系寺杣層の砂岩組成変化とその意義
別所 孝範
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2004 年 60 巻 60 号 p. 13-21

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抄録

紀伊半島に分布する四万十累帯白亜系寺杣層の砂岩について重鉱物分析とモード組成分析を行った. 重鉱物組成においては, 寺杣層中部層の中部 (コニアシアン) を境に, ジルコン・ガーネットに富みエピドート・チタナイト・アラニットを伴うタイプのものから, ジルコンに富み少量のガーネット・アナテーゼを含むタイプへと変化する. そして, モード組成においても, 同層準で長石質ワッケと石質ワッケの中間領域の組成から, 石質ワッケのみへと変化する.
このようにどちらの手法においても同じ層準で組成が顕著に変わることは, 後背地における供給源岩の変化を反映したものと推定される. すなわち, 寺杣層中部層の中部より下位の砂岩の堆積時の後背地では花崗岩類が卓越して露出しており, これより上位の地層の堆積時には珪長質な火山活動が活発化したと考えられる. 同じような砂岩組成の変化は, 北方に分布する外和泉層群でも認められる. 寺杣層で見出されたコニアシアン期の砂岩組成変化は, 地域による多少の時代差はあるものの西南日本の四万十累帯で広く認められ, 後期白亜紀において珪長質火山活動が活発化したことを反映したものと考えられる.

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