Japanese Journal of Social Psychology
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Commitment and expectations of acceptance as factors promoting relationship-repairing behaviors in response to interpersonal rejection: The mediation process and moderating role of attachment orientation
Genta MiyazakiTomoko Ikegami
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2015 Volume 30 Issue 3 Pages 164-174

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問題

親しい他者から拒絶されたとき、私たちはそれにどのように対処するだろうか。私たちには人と親密な関係を形成し、その関係を維持しようとする所属欲求(need to belong)が備わっていることを考えると(Baumeister & Leary, 1995)、拒絶によって脅かされた関係を修復するための行動がとられることが予想される。しかし、他者から拒絶されたとき、人は常に関係修復行動を行うとは限らない(Smart Richman & Leary, 2009)。本研究は、親しい他者から拒絶されたときに関係修復を促進する要因とその影響過程について検討し、被拒絶場面において関係修復を動機づけるメカニズムの特徴を明らかにする。

被拒絶場面において関係修復を動機づけるメカニズムと二者関係の特徴

被拒絶場面において関係修復を動機づけるメカニズムは複数あり、それぞれのメカニズムには特定の二者関係の特徴が深く関わっていることが先行研究から示唆されている。以下では、関係への依存性と関係における安心感という二者関係の特徴に注目することで、拒絶に対して関係修復を動機づけるメカニズムの相違を明確にする。

被拒絶場面において関係修復を目指した対処が動機づけられるメカニズムを論じた代表的な理論として、ソシオメーター理論(sociometer theory: Leary, Tambor, Terdal, & Downs, 1995; Leary & Baumeister, 2000)が挙げられる。ソシオメーター理論では、他者から拒絶されたとき、“誇らしい”、“自信がある”といった自己に対する評価的感情である自己関連感情が一時的に悪化することで、それが警告信号となって関係修復を目指した行動が動機づけられると仮定される。この理論では、自分を拒絶した相手との関係性によって自己関連感情の働きが変化することは想定されておらず、自己関連感情の働きは対人関係全般で機能すると考えられている。

しかし近年になって、ソシオメーター理論が想定するメカニズムは、自己にとって必要不可欠な関係を維持するために働いていることが示唆されている。宮崎・池上(2011b)は、ソシオメーター理論に相互依存理論(Thibaut & Kelley, 1959)の知見を援用することで、被拒絶場面での自己関連感情の働きを明確にすることを試みている。この研究では、関係から多くの恩恵が得られ、関係への依存性が強いほど、関係維持のための行動が動機づけられやすいという影響(Rusbult, Verette, Whitney, Slovik, & Lipkus, 1991)が、自己関連感情を媒介として生じていることを検討している。その結果、多くの活動を共有する依存性の強い親友関係ほど、相手から拒絶されたときに自己関連感情が悪化しやすく、それを媒介として関係修復的な対処行動が促進されることが明らかになっている。この研究では、自己関連感情には自己を肯定視する感情である自己肯定感情と自己が脅威にさらされていることを表す自己脅威感情の2側面があり、特に自己肯定感情が関係修復行動の動機づけに寄与していることも示されている。したがって、被拒絶場面において関係修復を動機づけるメカニズムとして、被拒絶場面での自己関連感情の悪化には、関係から得られる恩恵の喪失を警告する機能があり、その機能によって、多くの恩恵を得ている依存性の強い関係の修復が動機づけられやすくなるというメカニズムを想定できる。

ただし、被拒絶場面での自己関連感情の悪化は、関係への依存性と常に結びついて関係修復を動機づけるわけではないと考えられる。リスク制御理論(risk regulation theory: Murray, Holmes, & Collins, 2006)によると、親密な二者関係のなかで相手は自分を傷つけることはしないという安心感(felt security)を抱けない場合、自己が傷つけられることに敏感になり、相手からの拒絶によって自己関連感情が悪化しやすくなる(Murray, Griffin, Rose, & Bellavia, 2003)。そして、自己がこれ以上傷つかないように、関係を回避したり関係から離脱したりする自己防衛反応が動機づけられる(Murray et al., 2006)。一方、自己が傷つけられることはないという安心感が抱ける関係では、拒絶されたとしても自己関連感情は悪化しにくく、関係を修復・強化する行動が動機づけられると仮定される(Murray et al., 2006)。したがって、被拒絶場面での自己関連感情の悪化には、自己が傷つく危険性を警告する機能があり、その機能が抑制されることで、安心感が得られる関係の修復が動機づけられやすくなるというメカニズムを想定できる。

以上をまとめると、被拒絶場面で自己関連感情が果たす機能によって関係修復を動機づけるメカニズムは異なり、それらの機能は二者関係の異なる特徴と結びついていると考えられる。ただ、関係への依存性と関係における安心感は独立でないため(宮崎・池上,2011a; Murray et al., 2006)、それぞれのメカニズムの独自性を調べるためには、両者の影響を同時に検討する必要がある。先行研究では、依存性に関わる要因と安心感に関わる要因の影響が単独で検討されることが多く、我々が拒絶に対して関係修復を動機づける複数のメカニズムを持つことは十分に明らかになっていない。そこで本研究は、依存性の指標として関係へのコミットメント、安心感の指標として関係相手に対する受容期待を取り上げ、コミットメントは自己関連感情の恩恵喪失の警告機能、受容期待は自己関連感情の自己の傷つきの警告機能と結びついて、被拒絶場面において関係修復を動機づけていることを明らかにする。

コミットメントと受容期待が被拒絶場面での関係修復行動に及ぼす影響

上述のように、多くの先行研究では、拒絶への反応を規定する要因として、依存性に関わる要因と安心感に関わる要因の影響が単独で検討されている。そのなかで、宮崎・池上(2011a)の研究は、コミットメントと受容期待が被拒絶場面での対処行動に及ぼす影響を同時に検討しているという点で重要である。コミットメントは、関係への心理的な愛着、関係への長期的な志向性、関係の継続意図の3つの要素からなり、関係への依存性によって強まる(Arriaga & Agnew, 2001)。受容期待は、相手に対する要求場面において相手が受容的に反応してくれるかどうかの期待であり、相手が自分の要求に対して受容的に応じてくれると期待できるほど関係における安心感は強まる(Murray et al., 2006)。宮崎・池上(2011a)では、親友(または知人)からの拒絶場面で、コミットメントと受容期待がそれぞれ独自に関係修復的な対処行動を促進することが明らかになっている。また、この研究では、相手に対する受容期待が強いほど関係へのコミットメントが強いという影響も認められている。拒絶によって自己が傷つけられるリスクは親密で相互依存的な関係で高まるため(Murray et al., 2006)、自己が傷つけられないという安心感を抱くことで、関係への依存性を強めることが可能になると考えられている(宮崎・池上,2011a; Murray et al., 2006)。

以上のように、宮崎・池上(2011a)の研究は、コミットメントと受容期待が独自の影響を及ぼすことを明らかにしている。ただ、宮崎・池上(2011a)の研究では、コミットメントと受容期待が異なるメカニズムによって関係修復を動機づけているかどうかは明らかにできていない。この点を明らかにするためには、被拒絶場面での自己関連感情を測定し、コミットメントと受容期待が自己関連感情の異なる機能と結びついて関係修復を動機づけるかどうかを検討することが有用であろう。これまでの議論から、コミットメントと受容期待が自己関連感情を介して関係修復行動に及ぼす影響は次のように予測される。1)コミットメントが強いほど、被拒絶場面で自己関連感情の悪化が促進されることで、関係修復行動が動機づけられる、2)受容期待が強いほど、被拒絶場面で自己関連感情の悪化が抑制されることで、関係修復が動機づけられる。

ただし、コミットメントと受容期待による影響過程についての上記の2つの予測を見ると、自己関連感情の媒介過程について正反対の影響が予測されていることがわかる。そのため、2つのメカニズムは同時に働くのではなく、どちらのメカニズムによって関係修復が動機づけられるかを規定する要因が存在することが予想される。この点について考えるうえでWeiss(1998)による関係の分類が有用である。

優勢な関係修復メカニズムを規定する要因

Weiss(1998)は関係の機能を愛着(attachment)と親和(affiliation)の2つに分類している。愛着関係は、相手との近接性を保つことで安心感を提供する機能を果たす関係であり、親和関係は相手と交友関係を築くことで、遊びや探索といった様々な社会的活動を一緒に行うことを目的とする関係である(Mikulincer & Selinger, 2001; Weiss, 1998)。それぞれの機能の違いを考えると、愛着関係では安心感が得られるかどうかが特に重要となり、自己関連感情の自己の傷つきの警告機能が優勢になる。一方、親和関係では、相手と行う活動からどのような恩恵が得られているかが特に重要となり、自己関連感情の恩恵喪失の警告機能が優勢になることが予想される。

特定の関係でどちらの関係機能が優勢になるかは、関係のタイプによって異なることが指摘されている(Weiss, 1998)。一般に、恋愛・配偶者関係は愛着関係になりやすく、友人関係は親和関係になりやすい(金政,2013; Weiss, 1998)。ただ、同じ関係タイプであっても個人の愛着傾向によって優勢な関係機能は異なる(Mikulincer & Selinger, 2001)。そこで本研究では、個人の愛着傾向に注目することで、コミットメントと受容期待が自己関連感情の異なる機能と結びついて関係修復行動に影響していることを明確にする。

個人の愛着傾向は回避と不安の2つの次元で成り立つ(Brennan, Clark, & Shaver, 1998)。愛着回避は、他者に対する不信から、他者に依存し、親密になることを回避しようとする程度であり、愛着不安は、自分の価値に関する自信のなさから、自分が他者から拒絶され、見捨てられることを不安に感じる程度を表す(Brennan et al., 1998)。Mikulincer & Selinger(2001)は、個人の愛着傾向が同性親友関係での愛着機能と親和機能に及ぼす影響を検討し、愛着回避の強い人は、同性親友関係で愛着機能と親和機能がともに弱いこと、愛着不安の強い人は、同性親友関係に愛着機能を過度に求めることを明らかにしている。愛着回避の強い人は、他者に依存することを避けようとするために、相手への依存性を強める愛着機能と親和機能がともに抑制される。一方、愛着不安の強い人は、自己が傷つくことを恐れて関係における安心感を過度に求めるために、愛着機能が強まると考えられている(Mikulincer & Selinger, 2001)。したがって、一般に、同性の友人・親友関係では親和機能が優勢になる(金政,2013; Weiss, 1998)が、愛着回避の強い人はその親和機能が弱く、愛着不安の強い人はむしろ愛着機能が強いといえる(Mikulincer & Selinger, 2001)。

以上より、愛着回避と愛着不安は、特定の関係で優勢な関係機能に影響することで、自己関連感情の恩恵喪失の警告機能と自己の傷つきの警告機能を抑制あるいは強化することが予測される。そのため、自己関連感情による媒介過程が愛着傾向によって調整されるかどうかを検討することで、コミットメントと受容期待が自己関連感情の異なる機能と結びついて関係修復を動機づけていることの明確な証拠が得られると考えられる。

本研究の概要と予測

本研究は、同性の親友から拒絶されたときに、コミットメントと受容期待が関係修復行動を動機づけるプロセスについて、それぞれの影響過程の特徴と愛着傾向による違いを場面想定法によって検証する。本研究が依拠するリスク制御理論と成人愛着理論は、いずれも青年・成人期の恋愛関係や配偶者関係を主な対象とする理論である(e.g., 金政,2013; Murray et al., 2006)が、本研究が対象とする同性の親友関係は、愛着機能と親和機能の両方を有する関係であり(Mikulincer & Selinger, 2001)、両理論は適用可能と考えられる。本研究では、被拒絶場面での自己関連感情として、宮崎・池上(2011b)で関係修復を動機づける働きをすることが明らかになっている自己肯定感情を測定する。

本研究では、まず、個人の愛着傾向を考慮しない全体的な影響過程についての予測として、次の2つの予測を検証する。同性の親友関係では親和機能が優勢であるという指摘(金政,2013; Weiss, 1998)から、自己関連感情の恩恵喪失の警告機能が働きやすいと考えられるため、コミットメントが被拒絶場面での関係修復行動に及ぼす影響は、自己肯定感情によって媒介され、コミットメントが強いほど、被拒絶場面で自己肯定感情が低下しやすく、それにより関係修復行動が促進される(予測1)。一方、一般に親和機能が優勢で愛着機能が相対的に弱い同性親友関係では、愛着機能が優勢な配偶者関係を対象とした研究(Murray et al., 2003)から導かれるような、受容期待が弱いほど、自己肯定感情が低下しやすく、それによって関係修復行動が抑制されるという媒介プロセスは認められないと予測される。自己関連感情の自己の傷つきの警告機能が働きにくいと考えられるからである。ただし、同性の親友関係において、受容期待の影響が認められないわけではない。リスク制御理論では、受容期待が行動反応に影響するプロセスとして、自己関連感情を介した間接的な経路だけでなく、受容期待が強い関係では“もし拒絶されたと感じたら、相手への依存性を増加せよ”というif-then規則が自動的に実行されやすいという直接的な経路も仮定されている(Murray et al., 2006; Murray, Derrick, Leder, & Holmes, 2008)。また、同性の親友(または知人)からの拒絶場面において強い受容期待が関係修復行動を促進することが明らかになっている(宮崎・池上,2011a)。したがって、同性の親友関係において、強い受容期待は直接的に関係修復行動を促進することが予測される(予測2)。

次に、個人の愛着傾向による調整過程についての予測として、次の2つの予測を検証する。愛着回避の強い人は同性親友関係で親和機能が抑制され、愛着不安の強い人は愛着機能が促進されるという知見(Mikulincer & Selinger, 2001)から、強いコミットメントが自己肯定感情の低下を媒介として関係修復行動を促進する過程は、愛着回避の強い人では認められず、愛着回避の弱い人で認められる(予測3)。一方、弱い受容期待が自己肯定感情の低下を媒介として関係修復行動を抑制する過程は、愛着不安の強い人で認められ、愛着不安の弱い人では認められない(予測4)。

方法

調査参加者

近畿圏の3つの大学の学生178名(男性96名、女性82名)が調査に参加した。平均年齢は19.96歳(SD=1.41)であった。すべての参加者のデータを分析に用いた。

手続き

場面想定法による質問紙調査を行った。質問紙調査は、大学の講義時間の一部を利用するか、調査者の知人を通じて回答を依頼・回収するかによって行った。

質問紙では、まず、愛着傾向を測定する尺度に回答を求めた。次に、“最も親しく付き合っている同性の親友・友人”を1人想起し、その人物のイニシャルを記入してもらった。想起した相手との関係について、交際期間(M=71.64カ月、SD=56.84)、接触頻度(1項目、7件法、1.ほぼ毎日~7.ほとんどない、M=2.74, SD=1.57)、関係へのコミットメント、相手に対する受容期待を測定する尺度に回答してもらった。その後、相手からの被拒絶場面を描写したシナリオ(後述)を呈示し、実際にその出来事が生じた場合を想像してもらい、その場面で経験する感情と行動傾向を尋ねる尺度に回答を求めた。

被拒絶場面のシナリオ

想起した親友からの拒絶場面として、典型的な拒絶行動の1つである無視(Sommer, Williams, Ciarocco, & Baumeister, 2001)を取り上げ、親友から無視されるという以下のシナリオを独自に作成して用いた。

ある日、あなたは1人で家から学校に向かっていました。その途中その人を偶然見かけ、少し話をしようと思い、「おはよう」と挨拶をしました。しかしその人は何も返事をせず、そのまま歩いていきます。あなたは、自分の声が小さかったのかと思い、さっきよりも大きな声でもう一度話しかけました。すると、その人はあなたのほうにちらっと目を向けました。そこであなたは、「さっき話しかけたけど聞こえなかった?」とその人に尋ねました。しかし、その人はあなたのことを無視するかのように何も答えず、その場から立ち去って行きました。あなたは結局、1人で学校に向かうことにしました。

測度

結果

尺度構成

愛着不安と愛着回避をそれぞれ測定した8項目について、得点が高いほど不安と回避が強いことを表すように反転項目を修正した後に信頼性を確認したところ、いずれも十分な信頼性が認められたため、それぞれの平均得点を算出した(愛着不安、α=.87; 愛着回避、α=.78)。また、受容期待を測定した5項目について信頼性係数を算出したところ、十分な信頼性が認められたため(α=.79)、得点が高いほど親友からの受容的反応を強く期待していることを表すように平均得点を算出した。同様に、コミットメントを測定した6項目についても、得点が高いほどコミットメントが強いことを表すように反転項目を修正した後に信頼性を確認したところ、おおむね十分な信頼性が認められたため、平均得点を算出した(α=.72)。

シナリオ場面での感情反応として、被拒絶感と自己肯定感情をそれぞれ測定した4項目について、得点が高いほどシナリオ場面でそれぞれの感情を強く経験したことを表すように反転項目を修正した後に信頼性を確認したところ、いずれも十分な信頼性が認められたため、それぞれの平均得点を算出した(被拒絶感、α=.75; 自己肯定感情、α=.80)。

シナリオ場面での行動反応を測定した18項目については、先行研究(宮崎・池上,2011a)とは異なるシナリオを用いたため、行動反応の項目内容が異なっていた。そのため、探索的因子分析を行い、同一の因子構造が得られるかどうかを再度検討することにした。因子分析(最尤法、プロマックス回転)の結果、固有値の減衰状況(6.71, 2.10, 1.51, 1.17, 0.97…)から3因子構造と判断した。複数の因子に負荷が高かった、または、いずれの因子にも高い負荷を示さなかった2項目を除外し、再度因子分析を行ったところ、同様の3因子構造を得た(因子間相関=-.63~.52、累積説明率は51.42%)。第1因子は、“その人と会うのを避ける”、“その人とできるだけ付き合わないようにする”などの8項目に強く負荷しており、“消極的な関係破壊的行動”に関する因子と解釈できた。第2因子は、“もし自分に悪いところがあったならそれを直すとその人に言う”、“関係を元に戻すため、その人と話をする機会を作る”などの5項目に強く負荷しており、“関係志向的行動”に関する因子と解釈できた。第3因子は、“その人に向かって悪口を言う”、“なぜ無視するのかとその人を怒鳴る”などの3項目に強く負荷しており、“積極的な関係破壊的行動”に関する因子と解釈できた。各因子に高い負荷量を示した項目(.40以上)により下位尺度を構成し、項目平均値をそれぞれの行動得点とした(消極的な関係破壊的行動、α=.89; 関係志向的行動、α=.78; 積極的な関係破壊的行動、α=.68)。これらの因子は、宮崎・池上(2011a, 2011b)で得られたものと同一であった。

シナリオの妥当性

本研究で用いたシナリオによって被拒絶感が喚起された程度を確認するため、被拒絶感得点について中点(4)との比較を行った。被拒絶感(M=5.96, SD=1.07)は中点より有意に高く(t(174)=24.17, p<.001)、本研究のシナリオの妥当性が確認された。

記述統計

各変数の平均値、標準偏差、変数間の相関係数を算出し、Table 1に示した。

Table 1に示されるように、コミットメントと受容期待は得点が高いほうに偏っており、また、両者の間には中程度の正の相関が認められた。これは宮崎・池上(2011a)と同様の傾向であった。また、宮崎・池上(2011b)と類似した結果として、自己肯定感情と積極的な関係破壊的行動は得点が低いほうに偏っていた。

Table 1 各変数の平均値と標準偏差および変数間の相関
MeanSD2345678
1.愛着不安3.491.20.22**-.08.01-.01.16*.21*.09
2.愛着回避3.661.03-.34***-.29***.21**-.26**.09.28***
3.受容期待4.600.94.51***-.23**.43***-.41***-.44***
4.コミットメント5.251.01-.31***.44***-.34***-.48***
5.自己肯定感情1.741.04-.32***.41***.41***
6.関係志向的行動4.581.12-.33***-.59***
7.積極的な関係破壊的行動2.401.06.63***
8.消極的な関係破壊的行動3.101.41

Note.*p<.05, **p<.01, ***p<.001。受容期待(6件法)以外の変数はいずれも7件法で測定した。

予測の検証

予測1と2

予測1と2を検証するため、個人の愛着傾向を考慮せずに、全体として、コミットメントと受容期待が自己肯定感情を媒介して拒絶への行動反応に及ぼす影響過程を検証した。Figure 1の予測モデルに従ってパス解析を行った。宮崎・池上(2011a)では、受容期待とコミットメントの関係について、受容期待が強いほどコミットメントが強まるという方向性が仮定されていたが、本研究の目的は、コミットメントと受容期待の独自の影響過程を検討することにあった。そのことが明確になるように、両者の間には相関関係を仮定することにした。モデルに含まれる複数の変数に正規分布からの逸脱が認められたため、モデルの推定にはロバスト最尤法を用いた。各パス係数の標準化推定値をTable 2に示した2)

Figure 1 多母集団同時分析に用いたモデル図(飽和モデル)

Note.各行動反応の誤差変数には相関を仮定した。

Table 2 全体および愛着回避と愛着不安の高低における各パス係数の標準化推定値
全体愛着回避愛着不安
N=167高(N=83)低(N=84)高(N=85)低(N=82)
βpβpβpβpβp
コミットメント→自己肯定感情:W1-.26.002-.21.053-.33.008-.20.079-.33.009
受容期待→自己肯定感情:W2-.10.275-.11.268.05.725-.09.411-.10.481
自己肯定感情→関係志向的行動:W3-.22.004-.13.193-.35.001-.32.004-.16.071
自己肯定感情→積極的な関係破壊的行動:W4.41<.001.50<.001.26.004.37<.001.47<.001
自己肯定感情→消極的な関係破壊的行動:W5.11.098.05.552.14.117.13.122.07.462
コミットメント→関係志向的行動:W6.29.004.21.138.36.002.05.730.48<.001
コミットメント→積極的な関係破壊的行動:W7-.06.610.06.646-.30.006.01.979-.09.351
コミットメント→消極的な関係破壊的行動:W8-.27.014-.36.016-.22.121-.28.133-.26.043
受容期待→関係志向的行動:W9.24.004.27.010.13.215.46<.001.08.415
受容期待→積極的な関係破壊的行動:W10-.27.004-.27.024-.23.052-.24.111-.28.025
受容期待→消極的な関係破壊的行動:W11-.28.004-.37.001-.13.360-.24.104-.31.016

Note.愛着回避および愛着不安の高低の標準化推定値は制約なしモデルのものである。

Table 2に示されるように、自己肯定感情による媒介過程について、コミットメントが強いほど、被拒絶場面で自己肯定感情が低下しやすく(W1)、自己肯定感情が低下するほど、関係志向的行動が促進され(W3)、積極的および消極的な関係破壊的行動が抑制されていた(消極的な関係破壊的行動に対する影響は有意傾向)(W4とW5)。一方、受容期待は自己肯定感情に影響していなかった(W2)。Hayes(2013)に基づきブートストラップ法(リサンプリング回数は2000回)を用いてそれぞれの間接効果(媒介効果)の95%信頼区間を算出したところ、“コミットメント→自己肯定感情→関係志向的行動”の標準化した間接効果の95%信頼区間は.03~.16(標準化した点推定値は.06)、“コミットメント→自己肯定感情→積極的な関係破壊的行動”の標準化した間接効果の95%信頼区間は-.21~-.04(標準化した点推定値は-.11)であり、効果にばらつきは見られるものの、いずれも有意な間接効果が認められた3)。“コミットメント→自己肯定感情→消極的な関係破壊的行動”の標準化した間接効果の95%信頼区間は-.06~.01(標準化した点推定値は-.03)であり、間接効果は認められなかった。一方、受容期待が自己肯定感情を媒介してそれぞれの行動反応に及ぼす影響については、関係志向的行動(95%信頼区間は-.02~.07、点推定値は.02)、積極的な関係破壊的行動(95%信頼区間は-.11~.03、点推定値は-.04)、消極的な関係破壊的行動(95%信頼区間は-.04~.02、点推定値は-.01)のいずれも間接効果は認められなかった。なお、宮崎・池上(2011b)と一貫する結果として、コミットメントと受容期待がそれぞれの行動反応に及ぼす直接効果(W6~W11)は、“コミットメント→積極的な関係破壊的行動”のパス以外はいずれも有意であった。

以上より、個人の愛着傾向を考慮しない全体の傾向として、強いコミットメントは被拒絶場面で自己肯定感情を低下させることを介して、関係修復行動を動機づけていたが、受容期待については、自己肯定感情を介した影響は認められず、直接の影響のみが認められた。これらは予測1と2を支持する結果であった。

予測3と4

予測3と4を検証するため、愛着回避と愛着不安の高低をそれぞれの平均値(回避、M=3.66, SD=1.03; 不安、M=3.49, SD=1.20)を基準に群分けし、Figure 1のモデルに従って多母集団同時分析を行った。モデルの推定にはロバスト最尤法を用いた。具体的には、モデル内のすべてのパスについて、パス係数が群間で等値という制約を課したモデル(等値制約モデル)と等値制約を課さないモデル(制約なしモデル)を比較する尤度比検定によって、愛着回避の高低および愛着不安の高低でモデル内の各変数の影響が異なるかどうかを検討した4)。等値制約モデルのほうが制約なしモデルよりも適合度が有意に悪くなった場合、群間で影響が異なることを意味する。愛着回避の高低および愛着不安の高低における各パス係数の標準化推定値をTable 2に示した。

予測3を検証するため、愛着回避の高低による影響の差異を検証したところ、等値制約モデルのほうが制約なしモデルよりも適合度が悪かった(Δχ2(11)=30.24, p=.001)。Table 2の予測3に関連するパス(W1、W3、W4、W5)を見ると、コミットメントが自己肯定感情に及ぼす影響(W1)は、愛着回避低群では有意なのに対して、愛着回避高群では有意傾向にとどまった。また、自己肯定感情が関係志向的行動に及ぼす影響(W3)は、愛着回避低群では有意なのに対して、愛着回避高群では有意でなかった。W1とW3についてパス係数の大きさを群間で比較したところ、W1については群間で差は認められなかった(z=0.08, p=.937)が、W3については群間で有意差が認められた(z=2.26, p=.024)。なお、自己肯定感情が積極的な関係破壊的行動に及ぼす影響(W4)は、両群でパス係数の大きさに差はなく(z=1.54, p=.123)、自己肯定感情が消極的な関係破壊的行動に及ぼす影響(W5)は、どちらの群でも有意な影響は認められなかった。以上より、強いコミットメントが自己肯定感情の低下を媒介して関係志向的行動を促進する過程の一部が、愛着回避の高群では認められないことが示され、予測3は関係志向的行動について部分的に支持された。

予測4を検証するため、愛着不安の高低による影響の差異を検証したところ、等値制約モデルと制約なしモデルで適合度に差はなかった(Δχ2(11)=14.90, p=.187)。よって、予測4は支持されなかった。

考察

本研究の目的は、拒絶に対して関係修復を動機づけるメカニズムの特徴を明らかにすることであった。そのため、関係へのコミットメントと関係相手に対する受容期待という異なる二者関係の特徴が、被拒絶場面での自己関連感情の異なる機能と結びついて、関係修復行動を動機づけているかどうかを検討した。以下では、コミットメントと受容期待が被拒絶場面において関係修復を動機づけるプロセスの違いに注目しながら、それぞれの動機づけに関わるメカニズムの特徴について考察する。

被拒絶場面において関係修復を動機づけるメカニズム

関係への依存性の指標であるコミットメントと関係における安心感の指標である受容期待の影響を同時に検討したところ、それぞれの影響過程の違いとして、自己肯定感情による媒介過程の違いが明らかになった。まず、個人の愛着傾向による違いを考慮しない全体的な傾向として、親友関係へのコミットメントが強いほど、親友から無視されるという場面で自己肯定感情が低下しやすく、それを媒介として関係志向的行動が促進され、積極的な関係破壊的行動が抑制されていた。一方、親友に対する強い受容期待にはそのような媒介過程が認められず、直接の影響のみが認められた。同性の親友・友人関係では、相手と交友関係を築き、様々な社会的活動を一緒に行う親和機能が優勢と考えられている(金政,2013; Weiss, 1998)。そのため、同性の親友関係においては、相手との活動を通して得られる恩恵に注意が向けられやすく、自己関連感情の恩恵喪失の警告機能が優勢になったと考えられる。

次に、自己肯定感情による媒介過程が愛着回避と愛着不安によって調整されるかどうかを検討した結果、コミットメントが強いほど、親友からの拒絶場面で自己肯定感情が低下しやすく、それを媒介として関係志向的行動が促進されるという過程の一部は、愛着回避の低い人では認められるが、愛着回避の高い人では認められないことが明らかになった。つまり、愛着回避の高い人のように、親友関係で親和機能が抑制されている場合(Mikulincer & Selinger, 2001)、被拒絶場面での自己肯定感情の低下は関係志向的行動を促進していなかった。愛着回避の高い人が、他者との関係から自律的であることを求め、他者に対する依存を意識しないようにしていること(Edelstein & Gillath, 2008)と合わせて考えると、この媒介過程の違いは、被拒絶場面においてコミットメントの強さにより規定される自己肯定感情の低下に恩恵喪失の警告機能が備わっていることの明確な証拠といえるだろう。なお、本研究において、愛着回避による差が見られたのは関係志向的行動のみであり、自己肯定感情の低下によって関係破壊的行動が抑制されるプロセスに差は見られなかった。被拒絶場面で相手に自分の関係修復意図を伝えるには、関係志向的行動を表出するほうが、関係破壊的行動を抑制するよりも有効であると考えられる。そのため、相手から拒絶されるという関係継続の危機に直面したとき、関係から得ている恩恵を維持するという目標達成のために、関係破壊的行動を抑制するよりも、関係志向的行動を促進するほうが重視され、自己肯定感情による恩恵喪失の警告機能が働きにくい愛着回避の高い人において、特に、関係志向的行動への影響が認められにくかったと推測される。

ところで、愛着回避の高い人は、脅威に対して愛着システムの脱活性化方略(deactivating strategy)を用い、自己に脅威が生じたことを認めようとしないのであれば(Mikulincer & Shaver, 2007)、コミットメントが自己肯定感情に及ぼす影響についても愛着回避による調整効果が見られることは考えられた。しかし、本研究ではそのような調整効果は認められなかった。愛着回避と自己肯定感情の単純相関を見ると(Table 1)、愛着回避が高い人ほど、被拒絶場面で自己肯定感情が低下しにくいことが示されており、本研究でも脱活性化方略は用いられていることがわかる。そのため、本研究の結果は、強いコミットメントによって自己肯定感情が低下するという影響は、愛着回避の高い人の脱活性化方略の影響を超えて頑健であることを示唆している。つまり、強いコミットメント関係で拒絶されたときに恩恵喪失の危機が強く警告されることは愛着傾向の影響を超えた共通のプロセスであり、愛着回避の高い人は、その警告に対して積極的な対処行動を行わないことで、相手に対する依存性を意識しないようにしていると推測される。

以上の知見は、コミットメントが被拒絶場面において関係修復行動を促進するプロセスに自己肯定感情が介在していることを明らかにし、かつ、そのメカニズムに自己肯定感情の恩恵喪失の警告機能が関わっていることを明確にした点で、宮崎・池上(2011a, 2011b)の知見を拡張するものであったといえる。

本研究では、自己関連感情のもう1つの機能に関して、愛着不安の高い人は、相手との近接性を保ち安心感を得ようとする愛着機能を同性親友関係に求めやすいため(Mikulincer & Selinger, 2001)、親友に対する受容期待が弱いほど、親友からの拒絶場面で自己肯定感情が低下しやすく、それを媒介として関係修復行動が抑制されるという過程が認められると予測した。しかし、愛着不安の高低にかかわらず、受容期待が自己肯定感情を媒介として拒絶への行動反応に影響するというプロセスは認められなかった。受容期待が関係修復行動を促進するプロセスが、自己肯定感情の低下を介していなかったことは、関係修復を動機づけるメカニズムが安心感に関わる要因と依存性に関わる要因では異なるという本研究の主張と矛盾していない。ただ、そのメカニズムの違いは自己関連感情の異なる機能では十分に説明できなかった。このような結果が得られたのには2つの理由が考えられる。

1つは、リスク制御理論から予測される自己関連感情の自己の傷つきの警告機能が、同性の親友関係では働きにくい可能性である。同性の親友関係も愛着機能を有するとされている(Mikulincer & Selinger, 2001)が、同性親友関係と恋人・配偶者関係には大きな違いがある。恋愛関係や配偶者関係では、基本的に1人のパートナーとしか関係を結べないため、そのパートナーからの受容・拒絶が自己の関係相手としての価値の評価に大きく影響する(Murray et al., 2006)。それゆえ、パートナーから拒絶され自己価値が傷つくことに特に敏感になりやすいと考えられる。一方、同性の親友関係は、複数の親友・友人と同時に関係を結ぶことができるため、たとえ1人の親友から拒絶されたとしても、別の親友・友人から受容されていれば、自己価値は保たれる可能性がある。そのため、恋愛関係や配偶者関係と比べて、同性親友関係では、自己が傷つく危険性を警告する必要性が相対的に低いのではないかと推測される。

もう1つは、本研究で取り上げた自己肯定感情という自己関連感情には、自己の傷つきの警告機能が備わっていない可能性である。宮崎・池上(2011b)は、自己関連感情には、自己肯定感情と自己脅威感情の2つの側面があり、それぞれの感情は被拒絶場面で異なる行動を動機づけることを明らかにしている。具体的には、自己肯定感情は関係志向的行動を促進し、関係破壊的行動を抑制するが、自己脅威感情は関係志向的行動と関係破壊的行動をともに促進する(宮崎・池上,2011b)。自己肯定感情は関係修復に特化した感情であり、それが悪化することで関係修復行動が抑制されるというプロセスが見られなかったのかもしれない。

以上より、コミットメントと受容期待の影響過程について愛着傾向による差異を検討した結果、同性親友からの拒絶場面では、自己肯定感情の低下は、関係から得られている恩恵を喪失する危険性を自己に警告するように機能しやすいことが示されたといえる。被拒絶場面での自己関連感情の悪化によって関係修復が動機づけられるというプロセスは、ソシオメーター理論が想定するプロセスと一致する(Leary et al., 1995; Leary & Baumeister, 2000)。したがって、ソシオメーター理論で想定されている自己関連感情の機能は、自己に多くの恩恵をもたらしている関係を維持するのに寄与していることが示唆される(宮崎・池上,2011b)。被拒絶場面での自己関連感情の働きを明確にしたという点で、本研究の結果は、拒絶に対して関係修復を動機づけるメカニズムの理解に大きく貢献するものといえるだろう。

加えて、本研究では、個人の愛着回避傾向が拒絶に対する関係修復メカニズムの特定のプロセス(i.e., 恩恵喪失回避のための関係修復)を制御していることが明らかになった。個人の愛着傾向が関係修復行動に影響することは多くの先行研究で示されている(Mikulincer & Shaver, 2007)が、愛着傾向が関係修復プロセスの制御と結びついていることは本研究で得られた新たな知見である。これは、個人の愛着傾向によって優勢な関係修復プロセスが異なり、その結果として、二者関係の異なる側面が関係修復行動に影響しやすくなることを示唆しており、被拒絶場面の関係修復メカニズムに対する二者関係の性質と個人のパーソナリティの双方の影響をモデル化するうえで重要な知見といえる。

本研究の限界と今後の研究に向けた課題

本研究の限界の1つとして、自己関連感情の悪化に自己価値の傷つきの警告機能があるかどうかを明らかにできなかったことが挙げられる。今後の研究では、愛着関係である恋愛関係や配偶者関係(Weiss, 1998)では自己肯定感情の低下によって関係修復行動が抑制されるのか、また、自己関連感情を多面的に測定し(宮崎・池上,2011b)、自己肯定感情以外の自己関連感情では自己の傷つきの警告機能が認められるのかを検討する必要がある。

次に、本研究では拒絶に対する関係修復の動機づけメカニズムを自己関連感情の働きに注目して検討してきたが、自己関連感情を媒介しない動機づけのメカニズムも当然存在する。実際、本研究においても、コミットメントと受容期待が直接的に関係修復的な対処行動を促進するというプロセスが認められている。しかし本研究では、自己関連感情を媒介するメカニズムと直接的なメカニズムの違いについてはモデル化できていない。コミットメントの強い関係では、相手や関係の利益になる関係志向的行動が日頃から多く行われ(Rusbult et al., 1991)、関係志向的行動を習慣的に行うことによって、その行動が自動化する場合がある(Perunovic & Holmes, 2008)。また、強い受容期待によって良好な二者関係を構築・維持しようとする関係促進目標(relationship-promotion goal)が優勢になった場合、被拒絶経験と関係修復行動を直接結びつけるif-then規則(“もし拒絶されたと感じたら、相手への依存性を増加せよ”)が自動的に実行されやすくなる(Murray et al., 2008)。これらの知見を考えると、コミットメントと受容期待が直接的に関係修復を動機づけるメカニズムは自動的・非意識的なプロセス、自己関連感情を媒介したメカニズムは統制的・意識的なプロセスと位置づけることができるかもしれない。今後の研究では、拒絶に対して関係修復を動機づけるメカニズムについて、自己関連感情を媒介するメカニズムと媒介しないメカニズムも含めて、どのような場合にどのメカニズムが優勢になるのかをモデル化する必要があるだろう。

さらに、本研究の方法論上の限界として、仮想の被拒絶場面における感情および行動反応を測定していることが挙げられる。本研究で測定された反応は、あくまでも親友から拒絶されたときの自身の反応を予想したものであり、その予想通りの反応を実際の被拒絶場面で見せるかどうかは明らかでない。今後の研究では異なる手法を用いて本研究の結果が再現されるかどうかを確認する必要があるだろう。

また、本研究では、愛着傾向による調整過程を検討する際に、それぞれの愛着次元の高低によってサンプルを2群に分け、多母集団同時分析を行った。この手法は、複雑な仮説モデルにおける影響の差異を検討するうえで有用であるが、各群のサンプル数の減少によって検出力が低下するというデメリットがある。今後の研究では、調整された媒介モデル(moderated mediation model: Hayes, 2013)を援用するなどによって、それぞれの愛着次元による調整過程を再度検討することが必要であろう。

結語

以上より、親しい他者から拒絶されたときに関係修復を動機づけるメカニズムは複数あり、二者関係の異なる特徴に応じて異なるメカニズムで関係修復が動機づけられていることが示唆されたといえる。他者からの拒絶は所属欲求を持つ我々にとって大きな脅威となる。しかし、拒絶がどのような脅威をもたらすかは、自分を拒絶した相手との関係性によって異なる。本研究の結果は、我々には二者関係の特徴によってもたらされる特定の脅威に対処するための独自のメカニズムが備わっていることを示唆しており、拒絶への対処を動機づけるメカニズムの包括的な理解に向けて、本研究の貢献は大きいと考えられる。

References
 
© 2015 The Japanese Society of Social Psychology
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