2023 Volume 39 Issue 2 Pages 76-86
This study aimed to examine how workplace teleworking affects teamwork. Teamwork in remote situations has been studied from the perspective of virtual teams and team virtuality. Team virtuality can be classified into two aspects: (1) geographic dispersion and (2) technology use. Telework increases both geographic dispersion and technology use. On the other hand, past studies have not sufficiently examined how these two aspects affect teamwork. In this study, we examined the relationship between the two aspects of team virtuality and teamwork by analyzing two datasets, one at the individual level (Study 1, individual N=567) and the other at the team level (Study 2, team N=53). The results of Study 1 revealed that geographic dispersion was negatively associated with teamwork, while technology use was positively associated with teamwork. Study 2 showed a similar overall trend of association, although some aspects did not achieve statistical significance. Telework was positively associated with both geographic dispersion and technology use. In other words, the two aspects of team virtuality were shown to have potentially conflicting effects. Furthermore, Study 1 showed an interaction effect between these two aspects, suggesting that technology may moderate the negative effects of geographic dispersion on teamwork.
テレワーク(リモートワーク)は、従来の出社勤務とは異なり、自宅やカフェなどの遠隔した場所からICT(情報通信技術)を利用して業務を行う働き方を指す。特に、近年では在宅勤務と同義に使用されることも多い。日本でテレワーク普及の契機は、2020年に世界および日本国内で拡大した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)である。感染症対策として、対面機会を減らして仕事を行うことが社会的に要請され、在宅勤務形式のテレワークが短期間で普及した。パーソル総合研究所(2020)によると、正社員のテレワークの実施率は、COVID-19における第一回緊急事態宣言の直前である2020年3月半ばでは13.2%だったが、緊急事態宣言後の4月半ばでは27.9%へと1ヶ月で急増した。その後、出社勤務への一部回帰も見られるものの(後藤・濵野,2021; 総務省,2021)、従業員自身のテレワークに対する満足感や継続意図は高く(後藤・濵野,2020, 2021; 総務省,2021)、感染対策のみならず、今後の社会に必要な働き方として定着することが見込まれる。
本研究が対象とするチームワークの観点からは、テレワークにおいてコミュニケーション面の非効果性が指摘されてきた。後藤・濵野(2020)は、2020年7月までのCOVID-19感染禍でのテレワークに関する調査を概観し、テレワークの最大のデメリットとして「上司・同僚や顧客とのコミュニケーションの取りにくさ」が挙げられてきたことを指摘した。
ただし、テレワークが実際にコミュニケーション上の問題となるのかという点は必ずしも一貫して実証されたものではない。特に、COVID-19感染禍における国内調査では、テレワークとコミュニケーションの間にむしろ関連が見られないことが報告されてきた。縄田他(2021)では、2020年4月の第一回緊急事態宣言を挟んだ2020年1月と5月の2回調査を行い、チームワーク指標の前後比較を行った。その結果、COVID-19感染禍が始まる中で、テレワークが急速に普及しチーム・バーチャリティも大幅に高まった一方で、チームワークの変化はほぼ見られなかった。この調査は1企業の調査結果であるが、明瞭な悪化は見られなかった点で示唆的である。また、江夏他(2020)では、リモート日数が多い人と少ない人の生産性やコミュニケーションの認知に差は見られなかった。
以上のように、テレワークとチームワークやコミュニケーションとの関連性に関する実証研究は、特に日本国内では未だ不十分である。本研究では、チームワーク研究におけるチーム・バーチャリティ研究の文脈にテレワークを位置づけて議論していく。
チーム・バーチャリティ本研究では、テレワークの効果性をチーム・バーチャリティ研究の視点から検討する。チーム・バーチャリティとは、地理的に遠隔した場所から、PCやインターネットなどのテクノロジーを用いてチーム活動を行っている程度を指す(Dixon & Panteli, 2010; Gibson & Gibbs, 2006)。元々は、PCやインターネット環境の進展に伴い、従来型の対面チームとは異なる新たな形式としてのバーチャルチームという概念が1990年代後半に提唱され、研究が始められた(Lipnack & Stamps, 1997; Townsend et al., 1998)。研究初期では、対面チームとバーチャルチームを二項対立として比較されていたが、近年ではバーチャルチームとしての程度を示すチーム・バーチャリティとして検討されることが多い。チーム・バーチャリティは、チームデザインの側面の一つとして位置づけられる(Hoch & Kozlowski, 2014; Marlow et al., 2017)。
チーム・バーチャリティとチーム効果性の関連性に関しては、Purvanova & Kenda(2022)のメタ分析が重要である。現場の組織チームでは、バーチャリティとチーム効果性の間に明瞭な関連が見られないことを示した。一時集団を用いた実験室実験場面では負の関連が見られるが、より現場に近い形で組織チームでは負の関連は見られない。これは「バーチャルを介したチームはうまくいかない」という一般的な印象と実証的知見が食い違っているという点で、逆説としてのバーチャリティ(virtuality as paradox)とも表現される(Purvanova & Kenda, 2022)。また別のメタ分析研究(Carter et al., 2019)でも、チーム・バーチャリティとチーム・パフォーマンスの関連性はやや負の方向ながら全体としては関連性が低いと報告された。
では、なぜ組織におけるチーム・バーチャリティの効果は「正でも負でもない」となるのだろうか。本研究ではチーム・バーチャリティの2側面を分割して検討していく。
チーム・バーチャリティは、大別すると①地理的分散(geographic dispersion)と②テクノロジー利用(technology use)の2側面がある(Gibson & Gibbs, 2006; Gibson et al., 2014; Handke et al., 2020; 縄田他,2021)。①地理的分散は、メンバー同士が地理的に離れた場所で働くことである。例えば、メンバー全員が自宅でテレワークを行っているチームは、地理的分散が高い。もう一つの②テクノロジー利用とは、メールやチャット、ビデオ会議システム、クラウドサービス、オンライン業務システムなどのICTを介して、メンバー同士がコミュニケーションや連携を行う程度である。
これまでの研究では、地理的分散とテクノロジー利用の両側面の効果を同時に検討することが少なかった。例えば、Handke et al.(2020)のレビュー論文は、チーム・バーチャリティのチームへの影響に関する48件の論文を整理したが、大半の研究でどちらかのみの側面が検討されてきたと指摘した。また、メタ分析研究でも、チーム・バーチャリティの下位側面を考慮せずに検討されてきた(Carter et al., 2019; Ortiz de Guinea et al., 2012)。一方で、Purvanova & Kenda(2022)による、補足的解析としてこの2側面を分離したメタ分析結果では、2側面の効果の違いを見出していない。しかし、後述するように、本研究のように相互に統制した検討ではなく、結論づけられたとも言い難い。
かつてのバーチャルチームは、地理的分散とテクノロジー利用はともに高い状態であった。しかし、現代の企業組織では、職場のデジタル化が進む中でこの2側面が乖離してきている。現代の企業組織では、たとえメンバーが地理的に離れていなくとも、メールやミーティング、ファイル管理などICTは業務遂行に不可欠なものとなった。こうした現状を考慮すると、この2次元を分離して相互に統制しながら、チーム効果性との関連性の検証が必要となる。本研究では、地理的分散とテクノロジー利用の2側面は相互に正の関連性を持ちながらも、チームワークに対してはそれぞれ相反する影響があると予測した。
①地理理的分散の負の影響まず、地理的分散に関しては、チームワークに負の影響があると考えられる。メンバー同士が地理的に異なる場所にいる場合には、対面時のような言語的・非言語的情報の潤沢な即時的コミュニケーションが困難となることで、チームでの連携や協働が損なわれるだろう。こうした負の効果は、対面チームとバーチャルチームを比較した初期の実験室実験による研究知見(Ortiz de Guinea et al., 2012; Purvanova, 2014)や社会心理学におけるCMC(computer-mediated communication)研究(Baltes et al., 2002)から示されるものである。また、地理的な遠隔状況によるコミュニケーション不全は、COVID-19感染禍のテレワークに関する調査の中で問題点として指摘されてきた(後藤・濵野,2020)。以上より、テクノロジー利用の効果を統制すると、地理的分散はチームワークに負の影響があると考えられる。
②テクノロジー利用の正の影響現代では、業務遂行におけるテクノロジーの利用は、テレワークやバーチャルチームに固有のものではない(Foster et al., 2015)。メールやチャット、クラウドサービス、ビデオ会議システムなどのICTツールは、職場の効果性や効率性を高める目的で導入されている。対面であれバーチャルであれ、テクノロジーを適切に活用できるチームは、対面のみでは困難な点をICTツールの活用から補完することで、より効果的なチームワークの発揮が可能となると考えられる。
実証研究でも、対面、電話、電子メールなどメディアを多面的に用いることで、地理的分散にかかわらず、チームのコミュニケーションが向上した(Mesmer-Magnus et al., 2011; Stephens, 2007)。また、バーチャルチームにおいては、ICTに関するチームのメンタルモデルを共有したチームほど、チームの協調やパフォーマンスが高かった(Müller & Antoni, 2020)。
チーム・バーチャリティは、一時集団による実験研究では、チームワークにネガティブな影響を指摘する研究が多いものの、組織現場研究ではむしろポジティブな効果も指摘される(Purvanova, 2014; Purvanova & Kenda, 2022)。実験研究では、対面と比較する形でコンピュータを介する阻害効果を検討することが研究目的であるのに対して、フィールド研究では、ICTツールを駆使して業務を行うバーチャルチームが研究対象となるためであるからだと考えられる。以上より、地理的分散と別次元として統制した際には、テクノロジー利用は正の影響があると予測した。
2側面の交互作用さらに、地理的分散とテクノロジー利用の相互の関係も考慮すべきである。バーチャルチームは、地理的に分散しており、ICTなどの遠隔技術を用いることでチームでの連携を行っている。もしも全くPCもインターネットも利用できずメールや電話さえ使えない場面であれば、地理的に分散したチームはチームワークが発揮できず、チームの効果性は低くなるだろう。逆にいうと、遠隔技術にメンバーが熟達した場面では、たとえメンバーが地理的に分散していたとしても、チームワークを適切に取ることができることが考えられる。これは統計分析上における地理的分散とテクノロジー利用の交互作用効果として予測される。テクノロジー利用が低いときには、地理的分散がチームワークに特に悪影響をもたらすだろう。一方で、テクノロジー利用の高いチームでは、地理的分散がチームワークにもたらす悪影響は小さくなるだろう。
テレワークとチーム・バーチャリティの2側面との関係性テレワークは、職場チームにおけるチーム・バーチャリティの2側面をともに高めると考えられる。一方で、本研究では、この2側面がチームワークに対して相反する効果があると予測した。つまり、テレワークの影響は見かけ上、地理的分散の負の側面と、テクノロジー利用の正の側面によって、相殺されると考えられる。
仮説以上より、本研究の仮説はFigure 1として整理できる。
テレワークは、地理的分散とテクノロジー利用の両方と正の関連があるだろう。
テクノロジー利用を統制すると、地理的分散はチームワークと負の関連があるだろう。
地理的分散を統制すると、テクノロジー利用はチームワークと正の関連があるだろう。
テクノロジー利用が低いときには、地理的分散はチームワークとの負の関連が特に大きいだろう。一方で、テクノロジー利用が高い場合には、地理的分散の負の関連が小さいだろう。
本研究の概要本研究では、2つの研究から上記の仮説を検証していく。研究1では、クラウドソーシングサービスの利用者を対象に調査を行い、567名の個人単位の分析を実施する。さらに、研究2では、3企業53チームを対象に検証を行い、研究1の結果を補完する。
研究1では、クラウドソーシングサービスの利用者を対象にウェブ調査を行った。個人レベルの回答を対象に、上記の仮説を検証した。本研究は、第2著者および第4著者の所属機関の研究倫理委員会の承認を得た(承認番号2021-039)。
フルタイムで働く正社員、もしくは、1日6時間週4日以上の労働時間のある非正規として働く20–65歳の方を対象として、2020年11月にクラウドソーシングサービスで回答者を募集し、調査協力に同意した600名の回答者からウェブ上の調査回答フォーム(Microsoft Forms)を通じて回答を収集した。不誠実回答を検出するためのDQS項目(例:“この項目は「2. あまり当てはまらない」に回答してください”)に対して3回中2回以上誤答した回答を除き、最終的に567名の回答を分析対象とした。性別の内訳は、男性281名(49.6%)、女性281名(49.6%)、未回答者5名であった。平均年齢は39.47歳(SD=9.37)であり、平均勤続年数は8.65年(SD=7.79)であった。性別・年齢の割付は行っていない。勤務形態は、正社員429名(75.7%)および契約社員・派遣社員82名(14.5%)がほとんどであった。職位は、一般社員401名(70.7%)、係長クラス70名(12.3%)がほとんどであった。業種は、多い順に、サービス業159名(28.0%)、製造業110名(19.4%)、情報通信業50名(8.8%)、小売業38名(6.7%)、など、若干の偏りはあるがそれだけで大半を占める業種は見られない。勤務形態、職位、業種の詳細はSupporting InformationのTable S1に記載した。
分析変数チーム・バーチャリティ縄田他(2021)と同様の項目で測定された。ただし、チーム単位ではなく、個人を対象とした調査であるため、「このチームでは」ではなく、「私の職場では」から始まる尋ね方で測定した。具体的な項目は、地理的分散は「私の職場では、メンバーがいつも別々の場所にいて、顔を合わせずに業務を行っている」、「私の職場では、同じ時間、同じ場所に集まって業務を行うことが少ない」(r=.73, p<.01)、テクノロジー利用は「職場のメンバー間のコミュニケーションの大半は、パソコンやスマートフォンなどの情報機器を通じて行われている」「私の職場では、非対面でのコミュニケーションや情報共有のために、情報機器やツール、アプリがよく利用されている」(r=.77, p<.01)であった。それぞれ「まったくそう思わない」(1)から「非常にそう思う」(5)の5件法で尋ねた。
テレワーク業務比率「最近1ヶ月のあなたの業務において、テレワーク(在宅勤務など)が占める割合(%)を教えて下さい」という尋ね方で0%から100%まで10%刻みで、自身の該当箇所を選択してもらった。
チーム・プロセスチームワークの行動的側面の測定項目として、縄田他(2015, 2021, 印刷中)と同様の項目から、後述の3因子ごとに中核的な項目を抜粋して尋ねた。また、チーム・バーチャリティと同様に、元項目の「このチームでは」ではなく「私の職場では」という尋ね方で測定した。チーム・プロセスは「目標共有とフィードバック(例:私の職場では、自分たちの職務とその目的を確認しあっている、α=.84)」、「コミュニケーション(例:私の職場では、日常の業務の中で、遠慮することなくコミュニケーションを取っている、α=.88)」、「相互協力(例:私の職場では、仕事を一人でたくさん抱えているメンバーがいたら支援している、α=.85)」の3因子から構成される。それぞれ「まったくそう思わない」(1)から「非常にそう思う」(5)の5件法で尋ねた。確証的因子分析から3因子構造の妥当性が確認された(CFI=.965, RMSEA=.071)。また、3因子の平均値を「チーム・プロセス全般」と名付けて総合的な指標として、合計4側面に対して分析を行った。
その他の変数性別、年齢、企業規模を測定し、回帰分析の統制変数として投入した。年齢は直接数値を入力してもらい、性別と企業規模は下記カテゴリーから一つを選択してもらった。性別は0=男性、1=女性として、企業規模は1=従業員規模300人未満、2=従業員規模300人以上1,000人未満、3=従業員規模1,000人以上5,000人未満、4=従業員規模5,000人以上として分析した。それぞれ分析に際しては、未回答は欠損値として扱った。
以下の分析は、構造方程式モデリングに関してはMplus ver. 7(Muthén & Muthén, 1998–2017)を用いた。それ以外の分析はHAD ver. 17.105(清水,2016)を用いた。
各変数の平均値と標準偏差、並びに変数間の相関係数をTable 1に記載した。テレワーク業務比率とチーム・バーチャリティの2側面の間に、それぞれ有意な正の関連が見られた。
Mean | SD | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
チーム・バーチャリティ | ||||||||||||
1地理的分散 | 2.41 | 1.12 | 1.00 | |||||||||
2テクノロジー利用 | 2.61 | 1.19 | .45** | 1.00 | ||||||||
チーム・プロセス | ||||||||||||
3目標共有とフィードバック | 2.98 | 0.94 | .00 | .20** | 1.00 | |||||||
4コミュニケーション | 3.42 | 0.97 | −.13** | .09* | .63** | 1.00 | ||||||
5相互協力 | 3.23 | 0.83 | −.10* | .05 | .61** | .63** | 1.00 | |||||
6チーム・プロセス全般 | 3.21 | 0.79 | −.09* | .13** | .87** | .88** | .85** | 1.00 | ||||
その他変数 | ||||||||||||
7テレワーク業務比率 | 0.16 | 0.27 | .27** | .46** | .13** | .01 | .06 | .07† | 1.00 | |||
8性別 | 50% | — | −.10* | −.06 | .01 | .11** | .03 | .06 | −.04 | 1.00 | ||
9年齢 | 39.47 | 9.37 | −.03 | −.05 | −.04 | −.07† | −.01 | −.05 | .04 | −.08† | 1.00 | |
10企業規模 | 1.86 | 1.11 | .07 | .15** | .05 | .03 | .04 | .04 | .03 | −.09* | .02 | 1.00 |
Note. N=567(ただし、性別と企業規模には未回答者がいるためそれぞれN=562, N=554)、**p<.01, *p<.05, †p<.10、性別は0=男性、1=女性として、企業規模は1=従業員規模300人未満、2=従業員規模300人以上1,000人未満、3=従業員規模1,000人以上5,000人未満、4=従業員規模5,000人以上、として未回答・わからないを除いて算出した。
次に、地理的分散、テクノロジー利用、その中心化した交互作用項、ならびに統制変数である性別・年齢・企業規模を独立変数として投入した重回帰分析を実施した。Table 2およびFigure 2に結果をまとめた。
変数名 | 目標共有とフィードバック | コミュニケーション | 相互協力 | チーム・プロセス全般 | VIF | |||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
Step 1 | Step 2 | Step 1 | Step 2 | Step 1 | Step 2 | Step 1 | Step 2 | Step 1 | Step 2 | |
チーム・バーチャリティ | ||||||||||
①地理的分散 | −.09* | −.12** | −.20** | −.21** | −.16** | −.17** | −.18** | −.19** | 1.26 | 1.29 |
②テクノロジー利用 | .18** | .22** | .17** | .17** | .10* | .10* | .19** | .19** | 1.27 | 1.28 |
①*②交互作用項 | .12** | .07† | .08† | .10* | 1.05 | |||||
統制変数 | ||||||||||
性別 | .03 | .00 | .10* | .09* | .02 | .01 | .05 | .04 | 1.03 | 1.03 |
年齢 | .00 | −.05 | −.06 | −.07 | −.01 | −.02 | −.05 | −.05 | 1.01 | 1.01 |
企業規模 | .02 | .03 | .03 | .03 | .04 | .04 | .03 | .04 | 1.03 | 1.03 |
R2 | .04** | .06** | .06** | .06** | .02* | .03** | .05** | .06** | ||
ΔR2 | .01** | .00 | .01† | .01* |
Note. N=549, **p<.01, *p<.05, †p<.10。値は標準化係数である。性別は0=男性、1=女性として、企業規模は1=従業員規模300人未満、2=従業員規模300人以上1,000人未満、3=従業員規模1,000人以上5,000人未満、4=従業員規模5,000人以上、として未回答・わからないを除いて算出した。
Note.エラーバーは95%信頼区間を示している。
まず、主効果として、地理的分散は負の関連が、テクノロジー利用は正の関連が確認された。もともと正の関連がある地理的分散とテクノロジー利用の影響を相互に統制することで、単相関の結果よりも明瞭な効果が確認できた。
また、交互作用項も有意傾向以上の関連が確認されたことから、それぞれの単純主効果検定の結果をFigure 2に図示した。主効果で見られたとおり、地理的分散が高いほど、チーム・プロセスの各側面が低い傾向があったが、その程度はテクノロジー利用によって調整されていた。テクノロジー利用が低い(−1SD)場合には、地理的分散が高いほどチーム・プロセスの各側面が顕著に低いという関連性が見られた。一方で、テクノロジー利用が高い(+1SD)場合には、地理的分散が高かったとしても、チームワークがあまり低くない傾向が確認された。
構造方程式モデリング最後に構造方程式モデリングを実施し、Figure 1に示す仮説図に示す影響過程を検討した。結果をFigure 3にまとめた。テレワーク業務比率はチーム・バーチャリティの2側面ならびに交互作用項に正の関連性を持つとともに、地理的分散はチーム・プロセスに対して負の関連を、テクノロジー利用はチーム・プロセスに正の関連を持つことが確認された。また、事前に仮説を想定してはいなかったものの、テレワーク業務比率は交互作用項とも正の関連が見られた。実際に、テレワーク業務比率が平均よりも高い群と低い群それぞれでTable 2およびFigure 2と同様の重回帰分析を実施した結果では、高い群で交互作用効果はより強く見られていた(Supporting InformationのTable S2)。テレワーク業務比率が高いときに、交互作用効果が強く見られる可能性が示唆された。
Note.適合度:CFI=.978; RMSEA=.049; SRMR=.023。N=549, *p<.05, **p<.01。係数は標準化係数であり、角括弧内は標準化係数の95%信頼区間である。性別・年齢・企業規模は統制変数として独立変数に投入したが図からは省略した。誤差間相関も省略した。
以上の結果は、仮説1から仮説4を支持するものであった。
研究1では、所属チームに対する個人の回答を対象に、個人を単位とした分析を行った。一方で、チーム・プロセスは、本来は職場やチームといった集団単位の概念であり、チームワークの先行研究でも集団レベルの検討・分析の必要性である(縄田他,2015, 印刷中; Nawata et al., 2020)。研究2では、研究1の結果の妥当性を確認すべく、チーム単位のデータを元に分析・検討を行う。
ただし、研究2で直接検討しない点も先に記述する。研究1では、個人単位のデータから567名のデータをもとに交互作用効果も含めて比較的精緻な分析結果を得ることができた。しかし、チーム単位の分析では大きなサンプルサイズの確保が難しいことが多く、本研究でもサンプルサイズは52チームと大きくはない。そのため、仮説4の交互作用効果の検証は行わない。また、集団単位の分析では、チーム内の回答者の平均値に基づくために、変数間の相関が高くなりがちである。重回帰分析の独立変数として多すぎる変数を同時に投入すると推定結果が不安定となることから、統制変数を投入した分析は実施しない。研究2も同様に、第2著者および第4著者の所属機関の研究倫理委員会の承認を得た(承認番号2020-023)。
チーム・バーチャリティを測定した3つの企業のデータを対象に分析を行っていく。対象となる3企業の回答者は、社内の各チームの「チーム力」診断の一環として本調査に回答した。その際に、対象企業と回答者から、研究目的でのデータ利用と研究成果公表に同意を得ている。
A社は精密機器メーカーであり、2020年5月に202名、23チームから回答が得られた。B社は、システム開発IT企業であり、2020年7月に73名、19チームから回答が得られた。C社は民間シンクタンクである。特にITソリューション部門を対象として、2020年12月に105名、11チームから回答が得られた。なお、企業Aのデータは、一部が縄田他(2021)と重複している。以上の3企業、53チーム、380名のデータを対象に本研究では分析を行っていく。年齢分布は、20歳代80名(21.1%)、30歳代122名(32.1%)、40歳代108名(28.4%)、50歳代66名(17.4%)、60歳代4名(1.1%)であった。性別は、男性が339名(89.2%)、女性41名(10.8%)であった。
分析項目チーム・バーチャリティ縄田他(2021)と同様の項目で、最近1ヶ月のチームの状況を尋ねた。研究1にて「このチームでは」を「私の職場では」と変更する前の尋ね方である。「まったくそう思わない」(1)から「非常にそう思う」(5)の5件法で尋ねた。
テレワーク業務比率「最近1ヶ月のあなたの業務において、テレワーク(在宅勤務など)が占める割合(%)を教えて下さい」という尋ね方で0%から100%まで10%刻みで、自身が該当するところを選択してもらった。
チーム・プロセス測定項目は、研究1での「このチームでは」を「私の職場では」と変更する前の尋ね方であり、縄田他(印刷中)と同様の項目を用いた。このチーム・プロセスは「目標共有とフィードバック」(α=.83)、「コミュニケーション」(α=.78)、「相互協力」(α=.89)の3因子から構成される。それぞれ「まったくそう思わない」(1)から「非常にそう思う」(5)の5件法で尋ねた。また、研究1と同様に3側面の平均値として「チーム・プロセス全般」も加えて、合わせて分析した。
まず、すべての変数の級内相関係数を確認したところ、すべてにおいて有意な係数が確認された(ICCs>.06, ps<.02)。この結果からチームレベルでの分析の必要性が示された。以下の分析では、個人の回答のチーム内平均値を各チームの値として集約し、チーム単位で分析していく。なお、集団集約の信頼性を示すICC(2)は0.33~0.91であり、特にコミュニケーションに関しては低めの値となっていた。この点には留意が必要である。
チーム単位の記述統計と相関関係をTable 3に整理した。まず、テレワーク業務比率は、地理的分散(r=.63)、テクノロジー利用(r=.81)とともに高い正の関連性が確認された。この結果は、研究1とも一貫しており、仮説1を支持するものであった。なお、マルチレベル相関分析の結果も、Supporting InformationのTable S3に記載した。
Mean | SD | ICC | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
チーム・バーチャリティ | ||||||||||
1地理的分散 | 3.29 | 0.72 | .26** | 1.00 | ||||||
2テクノロジー利用 | 3.60 | 0.96 | .58** | .67** | 1.00 | |||||
チーム・プロセス | ||||||||||
3目標共有とフィードバック | 3.56 | 0.36 | .12** | .33* | .36** | 1.00 | ||||
4コミュニケーション | 3.78 | 0.37 | .06* | −.20 | .19 | .40** | 1.00 | |||
5相互協力 | 3.50 | 0.36 | .15** | .19 | .31* | .62** | .32* | 1.00 | ||
6チーム・プロセス全般 | 3.61 | 0.29 | .10** | .13 | .36** | .84** | .73** | .81** | 1.00 | |
その他の変数 | ||||||||||
7テレワーク業務比率 | 0.35 | 0.29 | .51** | .63** | .81** | .33* | .02 | .37** | .30* | 1.00 |
Note. team N=53, **p<.01, *p<.05。
次に、チーム・プロセスを従属変数とする重回帰分析を行った。本分析では、仮説2、仮説3にあたる地理的分散・テクノロジー利用とチーム・プロセスとの関連性を検討する。
重回帰分析の結果(Table 4)、テクノロジー利用は全体に正の関連性が見られた(目標共有とフィードバック、β=.26, p=.15; コミュニケーション、β=.59, p<.001; 相互協力、β=.34, p=.07; チーム・プロセス全般、β=.50, p=.006)。一方、地理的分散はコミュニケーションに対して有意な負の関連が見られた(β=−.60, p<.001)が、それ以外は非有意であった。サンプルサイズの小ささ(team N=53)から有意性や関連性の強さは従属変数の側面によっても変わるものの、研究1と同様に、地理的分散は負の関連、テクノロジー利用は正の関連という傾向は確認された。
変数名 | 目標共有とフィードバック | コミュニケーション | 相互協力 | チーム・プロセス全般 | VIF |
---|---|---|---|---|---|
①地理的分散 | .15 | −.60** | −.03 | −.21 | 1.83 |
②テクノロジー利用 | .26 | .59** | .34† | .50** | 1.83 |
R2 | .14** | .23** | .10** | .15** |
Note. **p<.01, *p<.05, †p<.10, team N=53。値は標準化係数である。
また、探索的分析として、各社ごとに同様の重回帰分析を行った(Table 5)。全体として研究1と同様に、地理的分散が負の関連性、テクノロジー利用が正の関連性が見られた。サンプルサイズがより小さくなるため有意性は指標ごとに異なるが、Table 4の全体データよりも、関連性は大きかった。この結果から企業間分散が関連性を低めた可能性が示唆されたため、さらに、各社ごとに変数を標準化(Z score)した上で3社統合データを作成した重回帰分析を実施し、Table 5の最下段に記載した。分析の結果、より明瞭で有意な関連性が見られた。
変数名 | 目標共有とフィードバック | コミュニケーション | 相互協力 | チーム・プロセス全般 | VIF | |
---|---|---|---|---|---|---|
A社(team N=23) | ①地理的分散 | −.22 | −.81** | −.56† | −.67* | 2.20 |
②テクノロジー利用 | .58† | .71* | .67* | .83** | 2.20 | |
R2 | .20* | .31** | .21* | .32** | ||
B社(team N=19) | ①地理的分散 | −.16 | −.71* | −.28 | −.48* | 1.95 |
②テクノロジー利用 | .86** | .87** | .87** | 1.05** | 1.95 | |
R2 | .58** | .40** | .50** | .63** | ||
C社(team N=11) | ①地理的分散 | −.58 | −.50 | −.39 | −.62 | 2.10 |
②テクノロジー利用 | .58 | .35 | .11 | .42 | 2.10 | |
R2 | .19 | .12 | .10 | .19 | ||
社内標準化後3社統合(team N=53) | ①地理的分散 | −.27 | −.71** | −.42* | −.59** | 2.08 |
②テクノロジー利用 | .68** | .69** | .63** | .82** | 2.08 | |
R2 | .27** | .28** | .19** | .33** |
Note. **p<.01, *p<.05, †p<.10。値は標準化係数である。
また別の探索的分析として、あくまでも補足的分析であることを前提に、所属チームに対する認知である個人回答データを分析対象(N=380)として、Table 1に示す研究1と同様の分析を実施した(Supporting InformationのTable S4)。その結果、「目標共有とフィードバック」に対する地理的分散の負の関連は非有意であったものの、それ以外に対して地理的分散は−.20~−.21の有意な負の関連が見られた。また、テクノロジー利用は.24~.30の有意な正の関連が見られた。これは研究1の結果や研究2のチーム単位の分析結果と同様の結果だといえる。一方で、交互作用項は目標共有とフィードバックに対して負の関連が見られたが、それ以外は非有意であった。
以上2つの探索的分析はあくまでも結果の理解を補足することが目的であるため、これ以上の議論は行わず、分析結果の提示のみに留める。
本研究では、チーム・バーチャリティを地理的分散とテクノロジー利用の2側面からそれぞれ測定し、その相反する影響とその交互作用効果の検証を行った。全体として、本研究の仮説を支持する結果が見られた。
チーム・バーチャリティの2側面の相反する関連性まず、研究1,研究2で一貫して、地理的分散とテクノロジー利用には中程度の正の相関が確認された。また、これらはともにテレワーク業務比率と高い正の相関が見られた。したがって、テレワークを多く行う人やチームほど、メンバーが地理的に異なる場所で業務を行っており、またその際のコミュニケーションはICTツールを通じたテクノロジー利用に基づくものであることが確認された。
また、研究1,2ともに、チーム・バーチャリティの2側面は、チームワークの行動的側面であるチーム・プロセスに対して逆方向の影響が示唆された。まず、地理的分散はチーム・プロセスと負の関連性が見られた。そして、研究1,2ともに、特にコミュニケーションとの関連性が高かった。この結果は、予測通り、地理的に離れた場所で働くことで、特にコミュニケーションの面でチームワークが阻害されうると解釈できる。
一方、テクノロジー利用は、チーム・プロセスと正の関連性を示した。このことは、ICTツールを的確に利用できるチームは、良好な連携が可能となると解釈できる。ICTツールは、在宅か出社かにかかわらず、そもそもチーム内での円滑なコミュニケーションや情報共有を支援するためのツールである。デジタル化が進む現代の組織では、ICTツールを活用できるチームがより優れたチームワークを発揮できると考えられる。
チーム・バーチャリティの2側面の交互作用効果さらに、研究1では交互作用効果を検討した。チーム・バーチャリティの2側面に交互作用効果が見られ、テクノロジー利用が低いチームでは地理的分散とチーム・プロセスの関連性が特に高い一方で、テクノロジー利用が高いチームでは地理的分散が高くともチーム・プロセスの得点は低くなかった。この結果は、テクノロジー利用を適切に行うことができるチームは、メンバーが地理的に異なった場所で働いていたとしても、チームワークが悪化しにくいという緩衝効果を示唆している。
ICTはテレワークを支える基盤技術である。地理的分散状況のテレワークではチームワークやコミュニケーションが阻害される懸念があるが、ICTツールを効果的に利用することで、直接対面せずとも優れたチームワークが維持・向上できることが示唆された。
ただし、注意すべき点として、研究1の交互作用項の係数は高くない。また、制限のある分析ながらも、研究2の個人データに基づく分析結果では、交互作用効果は確認できなかった。交互作用効果の妥当性に関してはさらなる検討が必要である。
本研究の制限チーム・バーチャリティとチーム・パフォーマンスの関連性は、研究デザイン、対象産業、チームタイプごとに均一ではないことも指摘されている(Carter et al., 2019; Ortiz de Guinea et al., 2012; Gibbs et al., 2017)。その背後には、本研究が扱ったチーム・バーチャリティの多面性が考慮されていなかったためである可能性も考えられる。本研究の研究1と研究2でも、チーム・バーチャリティの平均値は異なり、このことが結果に多少の差を生じさせた可能性もある。チーム・バーチャリティの特性の差異を考慮した、より詳細な議論が今後求められる。
本研究では、テレワーク業務比率やチーム・バーチャリティは、いずれも最近1ヶ月を想定して尋ねた。一方で、チーム・プロセスは、特に期間を明示して尋ねていない。この測定変数ごとに想定された期間の不整合が、因果という時間的前後関係を前提とする本分析にノイズをもたらした可能性がある。本研究は横断調査であり厳密に因果は主張しにくいため、今後はより因果を検討可能な手法を用いた検証が必要だろう。
また、COVID-19感染禍で初めてテレワークを経験したチームと、すでに経験のあるチームでは異なることが指摘されている(江夏他,2020)。本研究ではこの観点が不十分であった。今後経験による慣れを考慮した議論が必要となるだろう。
今後の展開本研究は、一般イメージと違いテレワークは単純にチームワークを悪化させるわけではないという「逆説としてのバーチャリティ」論に対して一つの回答を提示する。テレワークでは、地理的分散もテクノロジー利用も同時に高まる。地理的分散の負の影響とテクノロジー利用の正の影響がともに相殺し合う結果、テレワークはチームワークを悪化させてはいない。このことは、縄田他(2021)のCOVID-19の前後比較研究での、テレワークを推進した企業でチームワーク指標にほぼ変化がなかったという結果、ならびに組織現場におけるチーム・バーチャリティとチーム効果性のメタ分析結果(Purvanova & Kenda, 2022)とも整合的な結果である。テクノロジー利用を含めて、さまざまな対処を現場で講じているからこそ、地理的分散の高い遠隔チームも機能不全に陥ることなく、効果的に連携・協働を維持できていることが示唆される。
また、本研究は、適切なテクノロジー利用がテレワーク環境下のチームワーク維持に鍵となる可能性を示唆した。テレワークでは地理的分散もテクノロジー利用もともに高くなるが、この2側面の影響は逆方向に働く。地理的分散はチームワークを悪化させる一方で、テクノロジー利用は向上させる可能性が考えられる。テクノロジーを効果的に利用できるチームが、デジタル化が進む現代の企業組織で優れたチームワークを発揮する重要な要件となることを示唆している。
本研究が示す相反する影響は「対面vs.テレワーク」の2区分でチームを捉えることや、バーチャルチームやチーム・バーチャリティはテレワークに固有のものであると考えることの限界を示すものである。現在では職場のデジタル化は進み、対面チームでもICTを利用したチーム活動は行われている。その点で、テレワークを軸として働くチームのみをバーチャルチームとして特別視する必要はない。むしろICTツールを的確に駆使しながら対面での活動を軸に働くチーム形態も含めて、チームデザインの特徴の一つとしてチーム・バーチャリティを理解する必要があるだろう。対面と遠隔とシームレスに融合し補完させる、機能性の高いハイブリットなチーム形態が今後主流となっていく可能性は高い。こうした観点から今後のチームのあり方を検討することが必要となる。
バーチャルチームの導入の仕方も今後は詳細な検討が必要だろう。日本のCOVID-19によるテレワークの導入では、元々対面で業務を行ってきた対面チームが、在宅勤務によるバーチャルチームへと移行した。つまり、すでに対面で対人的な関係性が築かれていたチームであった可能性が高い。また、本研究のテレワーク業務比率は研究1では平均16%(研究1)、35%(研究2)と必ずしも高いわけではなく、一定頻度の対面で会う機会が補完的な効果を持っていた可能性も考えられる。一方で、もしも対人関係が十分に構築できていないチーム発達の初期段階や、経験の乏しい新規メンバーの参入の場合には、遠隔ではなく対面での信頼構築が重要となる可能性は高い。対面チームよりも、バーチャルチームでこそチームの信頼とパフォーマンスの関連が強いというメタ分析結果も報告されている(Breuer et al., 2016)。今後、チームの発達段階やメンバーの入れ替わりを考慮したテレワークやチーム・バーチャリティの効果の議論が求められる。
本論文では、テクノロジー利用を単一次元で測定し、その効果性との関連性を検討した。しかし、現実のテレワーク対応として利用されるICTのあり方も組織やチームごとに多様である。例えば、チャットツールを導入しテキストメッセージの頻度を高める、毎日定例のオンライン・ミーティングを行い会話する機会を増やす、オンライン上の仮想オフィスに“出社”する形を取る、などが挙げられる。このように内実をより具体的に測定・分析し、より効果的なバーチャルチームのあり方を解明していくことも重要となるだろう。