移植
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アルコール性肝硬変に対する脳死肝移植後長期経過例の成績 ~社会復帰を阻む再飲酒問題~
篠田 昌宏長谷川 康尾原 秀明高岡 千恵竹内 啓善谷木 信仁北郷 実阿部 雄太八木 洋堀 周太郎田中 真之中野 容山田 洋平板野 理北川 雄光
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2024 年 59 巻 Supplement 号 p. s139_1

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抄録

背景:アルコール性肝硬変(ALD)患者は、一定条件を満たせば脳死肝の提供を受けることが可能である。当施設のALD脳死肝移植(DDLT)後長期経過例の問題点を報告する。方法:ALDにDDLTを施行後4年以上経過例を後方視的に調査した。当院の移植条件は、18か月の断酒、家族と同居(支援)、術前に精神科医と面談し書面で断酒誓約をすること等である。結果:該当症例は6例(同時期DDLT36例の17%)。1例は経過良好、3例が再飲酒(本人申告)による肝機能障害、2例が原因不明の肝機能障害を発症した。本人申告の再飲酒例(症例1、2、3)は、全例40歳代、男/女性1/2例。断酒期間(34、26、19か月)を確認後DDLT登録し、26、101、154日目に脳死肝(全/分割肝2/1例)の提供を受けた。それぞれ術後48、48、61日目に退院、12、5、2か月目に肝機能障害を呈し、22、18、16か月目に再飲酒の申告(発覚)があった。全例精神科医が介入したが、症例1は就業中ながら肝機能障害が継続、症例2は移植後60か月に末期肝硬変で死亡した。症例3のみ、家庭環境改善にて断酒が可能となり肝機能が正常化、社会復帰を果たした。結語:ALD患者のDDLT後社会復帰を阻む再飲酒問題は、当施設では依然大きな課題であり、移植条件の再考や術後患者へのさらなる支援が必要と考えている。

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