2024 年 59 巻 Supplement 号 p. s320_1
はじめに 肝移植における肝動脈吻合の合併症は致命的合併症となる。そのため技術の継承が難しい手技の一つである。今回、その継承の取り組みについて報告する。方法 1999年から2024年までに当院で生体肝移植を施行した92件、及び脳死肝移植11件における肝動脈吻合の術中・術後合併症を後方視的に検討した。また、肝動脈吻合の術者育成についても検討した。肝動脈吻合は、当科スタッフにより行われ、肝移植導入時より2020年までは術中顕微鏡下、2021年より成人例では拡大鏡下(4.5倍)で行われた。結果 肝動脈合併症は、生体肝移植で、術中3例(2.9%)、術後10例(9.7%)に認めたが脳死肝移植では認めなかった。その内訳は、術中で吻合部狭窄1例、肝内血流障害1例、再建不可1例であった。術後では、肝動脈血流障害2例、血栓症3例、吻合部狭窄2例、出血1例、仮性動脈瘤形成2例であった。合併症の頻度は、顕微鏡11/85(12.9%)、拡大鏡下2/18(11.1%)であった。2021年より大学院生3人が人工血管を用いた練習やラット肝移植モデルによるマイクロサージャリー手技の修練後、肝動脈吻合の助手、前壁吻合、全周吻合を段階的に経験した。現在までに2人が全周吻合まで行った。【結論】 成人生体肝移植肝動脈吻合の合併症は顕微鏡下、拡大鏡下において同等であった。マイクロサージャリーによる修練は、肝動脈吻合の継承に有用である。