2024 年 59 巻 Supplement 号 p. s332_1
【症例】73歳男性【既往歴】糖尿病、高血圧症【現病歴】X-23年12月慢性糸球体腎炎を原疾患とする末期腎不全にたいし、生体腎移植をうけた。X-1年1月慢性抗体関連型拒絶反応にて移植腎機能廃絶し、X年9月妻をドナーとした血液型不一致二次生体腎移植を施行した。二次移植前の水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)-IgGは4.3(+)であった。移植後拒絶反応を認めず、腎機能は安定していた。X+4年3月嘔吐と脱力のため当院救急外来へ搬送され、精査の結果、高度の低Na血症と炎症反応を認め緊急入院した。【経過】入院後補液により意識状態は改善傾向となった。第2病日体幹部に水疱と紅斑を認め、VZV抗原検査陽性であり、皮疹は非分節性であることから帯状疱疹ではなく水痘と診断した。VZV-IgM 1.65(+)、VZV-IgG 3.2(±)だった。同日よりアシクロビル350mgを開始し水疱は軽快傾向となったが、第11病日に再度意識障害を呈し腰椎穿刺施行したところ、髄液中VZV-DNA PCR陽性であり、水痘脳炎と診断した。同日よりアシクロビル750mgに増量し脳炎は軽快した。【考察】本症例は移植前VZV-IgG陽性例だったが、今回発症時VZV-IgM抗体陽性であることから水痘再感染をきたしたと考えられた。【結論】腎移植前VZV-IgG陽性であっても、移植後に脳炎を含めた播種性水痘をきたしえることに留意する必要がある。
