2024 年 59 巻 Supplement 号 p. s355_3
症例1は移植時20歳代、女性。原疾患IgA腎症に対し、母親をドナーとした生体腎移植を施行した。移植後22年で腎機能悪化し、透析再導入前のスクリーニング検査にて移植腎に40mm大の腫瘤が指摘された。血液透析導入の上、移植腎摘出を行った。病理は淡明型腎細胞がんであった。症例2は移植時60歳代、男性。原疾患抗GBM抗体型急性進行性糸球体腎炎に対し、配偶者をドナーとした生体腎移植を施行した。移植後5か月目に移植腎機能の悪化と30mm大の移植腎腎門部腫瘤を認めた。腎門部腫瘤の生検を行い、移植後リンパ増殖性疾患(PTLD)の診断となった。免疫抑制薬の減量を行ったが、腫瘍が徐々に増大し、腎機能が悪化して血液透析再導入となった。移植後6か月で移植腎摘出を行った。症例3は移植時40歳代、男性。原疾患慢性糸球体腎炎に対し、脳死下献腎移植を施行した。術前抗EBV抗体陰性であった。移植後1か月のプロトコール生検にて尿細管間質への細胞浸潤を認めたため、ステロイドパルス療法を施行した。しかしその最中に、腎機能の急激な増悪を認めた。移植腎生検を再検しPTLDの診断となった。血液透析再導入とし、移植後2か月で移植腎摘出を行った。移植腎に限局した悪性腫瘍の発症率は腎細胞がんで0.19%、PTLDで0.2-0.6%と報告されており、比較的稀な疾患である。当院では3症例とも移植腎機能低下をきたしており、移植腎摘出を施行した。摘出後はどの症例も再発なく経過している。