2024 年 59 巻 Supplement 号 p. s363_1
症例は53歳、男性。2018年IgA腎症による末期腎不全に対し母をドナーとする血液型一致生体腎移植を施行した。導入時シムレクトを使用し、維持免疫抑制療法としてプログラフ、セルセプト、メドロールの3剤併用した。その後在宅持続陽圧呼吸療法(CPAP)を導入し、外来加療中であった。2022年12月より呼吸困難、発熱が出現し当院外来を受診した。38.0℃の発熱とSpO2:92%と低下を認め、胸部単純X線及びCTで両下肺野に浸潤影、気管支肺炎像を認めた。予防的抗生剤投与により治療を開始し症状は軽快したが以降5回にわたり同様の肺炎のエピソードを繰り返した。当初、CPAPの外気フィルターに付着した病原細菌や過敏性肺炎の可能性も考慮したが、フィルターからはBacillus speciesなどの環境中の常在菌を検出するのみであり、トリコスポロン類を検出されないことから夏型過敏性肺炎も否定された。2023年5月の再入院時、問診により生活環境の汚染が高度であることがわかり、一連の経過から住居関連性過敏性肺炎(home rerated hypersensitive pneumonitis、HRHP)と診断した。 HRHPは特定の抗原の吸入曝露により生じるアレルギーが原因の呼吸器疾患であるが、そのうち住居が原因と想定されるものの特定の真菌など原因が証明されない一群をさす。その治療には厳格な抗原回避が必要である。腎移植後に原因の特定が困難であり再燃を防ぐのに苦慮したHRHPの1例を経験したので報告する。