熱帯農業
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インド型水稲苗の生理生態的特性に関する品種間差異
(第2報) インド型水稲苗の窒素反応の品種間差異
太田 保夫ナバラトナ S. K.
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1966 年 10 巻 2 号 p. 93-98

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抄録
本試験は, インド型水稲苗を用ひて, 窒素に対する反応の品種間差異を明らかにするために, 15品種を用いて1962年より1963年に亘ってセイロン農務局ペラデニヤ中央試験場において行なったものである.試験結果の大要は次のごとくであった.
1.草丈の伸長量には, 品種間に明らかな差異があり, また窒素施肥によって生育が促進された品種V・P., Heenati310およびH-4と生育が抑制された品種V.I., Rewadla, M.S. g-18, H.501およびMawi B-11などがあった.
2.播種後5週間より6週間における乾物増加率は, 品種によって明らかな差異を示し, 乾物増加率が著しく大きい品種は, 窒素施肥により, 乾物増加率が低下する傾向を示し, これらの品種には, 耐肥性が低い品種が多かった.他方, 乾物増加率は中庸で, 窒素施肥によって, 乾物増加率が増大した品種は, 耐肥性が高い品種であった.
3.耐肥性の高い品種は, 苗乾物/草丈比率が高い品種が多く, また施肥によるその比率の変動も少なかった.
4.葉鞘部澱粉含有率は, 苗のエイヂおよび窒素レベルによって異なるが, 耐肥性品種は, 苗の葉鞘澱粉含有率がやや高く, 窒素施肥による変動が少ない特徴がみられた.
5.インド稲苗の乾物増加率は, 葉鞘澱粉含有率ときわめて高い正の相関を示す.したがって葉鞘澱粉含有率が高いものは, 乾物増加率も高いが, 窒素に対する反応が敏感で, 施肥によって葉鞘澱粉含有率は急激に低下し, 窒素過剰の障害を示す.他方, 耐肥性の高は品種例へばH-4, SR26BおよびPokkaliは, 乾物増加率もあまり大きくないが, 窒素施肥による葉鞘澱粉含有率の低下が少ない.
以上の結果, インド型水稲には, 窒素に対する反応, に明らかに品種間差異がみられ, 一般に耐肥性は小ざいが, 耐肥性のある品種は, 窒素の供給に対して, これをゆるやかに吸収同化し, 体内に異常を起させないように調節しているものに推定された.
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© 日本熱帯農業学会
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