抄録
この試験は筆者がガンボディア王国バッタンバン州, 農業技術センターに1964年7月から約2カ年間駐在している間に行なったものであり, 単年度の試験ではあるが, 熱帯地盛における一事例として, こゝに結果の概要を報告することとした.
試験は1965年12月から1966年4月の乾期において台南3号 (生育期間約4カ月) を用い, 多肥条件下で常時湛水, 間断かんがい, 常時落水等の各区を設けて行なった.土壤はグラン・ラック冲積の重粘土で地力は低く, 水田にした場合の鉛直滲透量も極めて少ない.この試験の目的は, 乾季裁培における水田の用水量を明かにすることと, 収量をおとさずにどの程度かんがい水量を節約できるかを明らかにすることであった.
常時湛水した場合の水分消費量は, 有効雨量を含めたかんがい水量, 水田における減水深, 計器による蒸発散量と鉛直滲透量の3者から計算して平均1日あたり9~10mmであり, また蒸発散量は平均1日あたり約7mmである.
節水裁培については, 移植后活着しまたは有効分けつの決定されるまでの15~20日の期間と, 出穂前15日から出穂后約10までの期間を重点的にかんがいすることにより収量をおとさずに40%近くのかんがい水を節約できる.