熱帯農業
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タイワンヤマチャの形態に関する研究
III. 蓮華池および2・3の地域における茶樹について
橋本 実
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1969 年 12 巻 3-4 号 p. 117-121

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抄録

1.1968年2月から3月にかけて, 台湾中部の蓮華池, 水社大山および南部の六亀などの地域に生育するタイワンヤマチャについて植物形態学的調査をおこなつた.
2.木の性状は蓮華池に生育するチャは枝が粗に分岐し, 喬木性を呈し, 最大樹高12mを測定した.水社大山および六亀のチャは枝がやや密に分岐し, 潅木性を呈していた.
3.葉の特徴はどの地域のチャもほとんど差異が認められず, 側脈数は8対を測定した.なお新芽ないし幼葉の観察において, 蓮華池に分布する個体 (株) はいずれもアントキアンを含み, その他の地域では種々雑多であった.
4.花器について, 蓮華池のチャは開花状態を観察することができなかったが, 開花を終えたものについての観察では子房, 花柱ともに差異を認めなかった.
5.蓮華池に生育するチャは冬芽を被うりん片の長さが最長4cmを測定し, その特徴はヤブツバキやサザンカと類似していた.また果実について果皮の表面がいぼ状を呈していた.これらの観察はこれまでのチャの種および変種と比較して, 著しく異なった特徴を示していた.
6.台湾におけるタイワンヤマチャについて, 丘陵地帯に生育するチャには2系統があり, 山岳地帯に生育する系統とあわせて, 3系統の存在が明らかとなった.なお蓮華池のタイワンヤマチャはチャCamellia sinensisの変種なのか, あるいは全く別の種であるのかは今後の調査にまたなければたらない.

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