抄録
現在のカンボジア農民に普及容易な砕米発生防止方法を見出すために, 籾の乾燥方法に関する研究を行なった結果は次のとおりであった.
1) 雨季作稲について11月におこなった試験の結果によれば, 穂を地表から数十センチメートル離して干す束立干し区の砕米率は, 平干し区および逆束立干し区のそれよりも低かった.しかし3日以上, 束立干しを続けると砕米率が急速に増加する傾向が認められた.従って雨季作稲について, 砕米率10%以下の乾燥籾を得るためには, 1~2日間の束立干し法も有効と考えられる.
2) 乾季作稲について4月におこなった試験の結果によれば, 砕米発生防止のために束立干しは効果がないことが判明した.砕米発生防止効果の認められたのはハーフカバー干しだけであった.約3日間のハーフカバー干しにより, 砕米率を10%以下におさえながら, 籾含水量を17~18%まで下げることが可能であると認められた.しかし砕米率を10%以下におさえながら籾含水量を更に下げることは, この季節においては, ハーフカバー干しでも困難なようである.従ってハーフカバー干しにより2~3日乾燥した後, 堆積するか日蔭に入れる等の処置をしなければならないであろう.
3) 堆積の方法として, 慣行積みは, 平干しのまま放置するのに比べ, 砕米の発生を防ぐのに役立つ.しかし1ケ月の堆積により, 内部の籾でも25~30%の砕米を発生する.表層部の直射日光を受ける部分の砕米率は, これより相当に高くなることはいうまでない.
4) 円柱積みは直射日光および雨にさらされる穂の部分の表面積を小さくすることを目的としたものである.穂の露出した部分の面積が小さいから, 少量のわら等でその部分を被覆し, 総ての穂を蔭干しに近い条件下に置くことが容易である.乾季の末期から雨季の初期にかけて45日間, 円柱積みを続けた籾の砕米率は10%以下で, 蔭干しした籾の砕米率と殆ど差がなかった.ただ頂部 (表層部) の若干の籾だけは, 雨に対する防護不十分のため砕米率が高かった.
5) 上記の結果から, 雨季作においては, 1~2日間の束立干し, なし得れば3~4日のハーフカバー干し, 要すればその後, 円柱積みを行なうのがよく, 乾季作においては, 2~3日のハーフカバー干しの後, 円柱積みを行なうのがよいものと考えられる.
6) 乾季作稲の収穫後まもなく雨季が始まるから, 雨の影響を防ぐ方法について更に検討が必要と考えられる.