熱帯農業
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茶樹の起源に関する形態学的研究
第4報 シャンおよびアッサム種の変異性について*
橋本 実志村 喬
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1976 年 20 巻 1 号 p. 1-7

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抄録
1. 上部ビルマのTanai, Tanghpre, NamhsanおよびKutkaiのシャン種とインド・アッサム州のDarrang, TinsukiaおよびJaipurなどで採集したアッサム種を供試材料として, 相関および回帰を利用して葉の形態学的比較を試み, さらに1972年1月, アッサムから種子を導入して育成した2年生実生苗20株について外部形態学的測定をおこなった.
2. 上部ビルマおよびアッサムにおけるチャの葉長と葉巾の相関は, いずれも高い相関関係が認められた.また回帰について, アッサム3地域のチャは一致したが, 上部ビルマのチャは回帰係数が低く, シャン種は葉の長さが大きくなるにつれて, アッサム種ほど葉の巾が増加していなかった.
3. 葉の大きさについては, いずれの地域も変異の巾が広く, 種々雑多な特徴を示し, 植物分類学上シャン種とアッサム種との区別は認められなかった.
4. アッサム地域の中で, 地域別にチャの葉の大きさを比較すると, Naga Hills寄りのチャは一般に大きく, Brahmaputra河の段丘地帯のチャは小さい傾向にあった.これは生育地の環境, 例えば地形や気象条件などの違いによるものと思われる.
5. 温室内で育成している2年生実生苗については上部ビルマやアッサム地方に生育しているチャと著しい差異は認められず, 葉長も約11~19cmと変異の巾が広かった.また葉長と葉巾の相関ならびに回帰についてもほとんど類似していた.
6. 実生苗の樹姿の観察では直生型と分枝型の二つのタイプが表われ, その割合はほぼ半数ずつであった.これはアッサム種は高木で枝が粗に着き, 中国種は低木で叢生するという定説を再考しなければならない問題と考える.なお台湾に野生するチャ (var. sinensis) には15mに達し, 枝が粗に着くものも少なくない (橋本, 1967) .
7. 今後の課題としては生育地の環境と変異性との関係を明らかにするとともに, 中国種とアッサム種の植物形態学的差異を種々の統計学的方法によって究明しなければならないと思われる.
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