熱帯農業
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熱帯地域における稲作の研究
1.スーダンの極度の高熱乾燥下における稲の収量反応および発熱反応
松島 省三池和田 寿前田 昭男本間 進二木 光
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1982 年 26 巻 1 号 p. 19-25

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抄録

スーダン国中部の白ナイル州首都Dueim市郊外の砂漠で, 2カ年4作 (乾期・雨期) の稲作試験を行った.この地の日中の気温は時に45℃にも達するほどの高温であり, 相対湿度も20%を下回るほどの乾燥地である. (ただし, 冬期は例外で, 最低気温は10℃以下になる日さえある.)
この報告では, 周年栽培試験と品種試験の結果を用いて, 収量と気象要素との関係, および高温乾燥下での登熟度の品種間差異を整理した.その結果, 次の事実が判明した.
1.収量は登熟盛期 (出穂後20日間) の日最高最低平均気温の平均値と密接な関係のあることが指摘され, 気温の高いほど収量は低下する.
2.発育停止籾歩合は出穂後20日間の日最高最低平均気温の平均値と正相関が認められ, 気温の高いほど発育停止籾歩合は高い.
3.不受精籾歩合は開花期を中心とした10日間の相対湿度と負の相関を示し, 湿度の高いほど不受精歩合は低い.
4.出穂期の最高気温が40.0~42.1℃のSampleを選んで整理すると, 登熟歩合と不受精歩合は強い負の相関を示し, 登熟歩合の高いものほど不受精歩合が低く, Fig.4の相関表から, 容易に登熟度についての品種間差異を判定できる.この表から, 高温下の登熟良否について, きわめて大きな品種間差異の存在することが認められる.
以上の事実から, 熱帯地域における稲作改善には, 高温 (時に低湿) 下における登熟度の品種間差異の研究の必要性が強調された.

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