1982 年 26 巻 1 号 p. 6-13
ムダかんがい地域の二期作水稲の安定多収栽培技術体系を組立てるために, 1980年の乾期作に, 同地域の代表的低収土壌地帯に属するJitra地区の農家水田で, 多収性品種・施肥・密植・病虫害防除及び除草の収量に及ぼす影響を検討した.試験の結果は窒素及び一部のほ場を除いた燐酸の施用が有意な増収をもたらし, 密植もm2当たり穂数の有意な増加をもたらしたが, 病害虫防除による増収は認められず, 除草も1ほ場を除き増収は認められなかった.一方, 総合技術導入区の収量は同一ほ場の農家の栽培した水稲の収量よりも, 平均して32%の有意な増収となったが, その増収は導入品種の特性に基づくもみ千粒重に起因し, 増収の基本となる穂数の増加に関しては, 農家技術との間には全く差が認められなかった.これはククカンビンによる慣行移植法が深植をもたらし, 初期生育を抑制したため, 穂数の増加に基肥が有効に作用しなかったためと考えられた.