抄録
異なる傾斜勾配の場所で栽培したココヤシの生育性を, 展開葉数, クラウン部に着生する生存葉数および初出穂の時期を経時的に調査することにより比較した.平坦地栽培では, 定植後2年間の年間展開葉数は6~8枚であったが, その後の年間展開葉数は11~18枚になり, 累積展開葉数はほぼ直線的に推移した.定植後5~6年目になると, 下位から54~55葉目の葉腋から仏焔苞の初出現が認められた.また, その時期になると生存葉数がほぼ一定化し, クラウン部に23~27枚の展開葉が着生していた.一方, 急傾斜地での栽培では年間展開葉数が著しく少なくなり, 生存葉数も極端に少なかった.また, 葉展開の遅延のため, 仏焔苞の出現も著しく遅れていた.施肥により, 葉展開速度の回復と生存葉数の増加が幾分認められるものの, 正常な生育パターンにまで回復しなかった.緩傾斜地栽培では, 生育は幾分遅れるが, 施肥により, この遅延は解消され, 平坦地栽培と同様の生育性を示した.低栽植密度 (142樹1ha) と高栽植密度 (320樹/ha) を比較したとき, 平坦地および緩傾斜・施肥栽培では, 低栽植密度において生育が助長される傾向にあった.