抄録
東北タイの大部分は緩やかな波状地形をもつ台地地形をなしており, 山地も沖積低地も面積的には重要性が低い。台地上の土壌はほとんどが砂質で肥沃度が低く, かつ物理性も悪いため, タイ国における主要な問題土壌となっている。
この台地地形とその上の土壌材料の成因については, 従来多くの論議がなされてきているが, 近年有力と考えられているのは, 基盤岩風化物のマスムーブメント (mass movement) やアウトウオッシュ (outwash) など局地的な運搬・堆積によるとする説である。
土壌学的な立場からも, 土壌材料の成因は肥沃度などの特性を左右する重要性を持つところから, この問題にアプローチすることとし, コンケン周辺に3トランセクト (transect) を選び, 斜面の上部から下部にかけて, それぞれ4土壌断面を記載し分析用試料を採取した。物理性, 化学性など一般分析のほか, 材料の特性を知るために三二酸化物の形態, 粘土鉱物, 全化学組成を分析した。
一般分析の結果, これら土壌が石英質の砂を主成分とし, そのために例外的なまでに肥沃度が低く物理性が悪いことを再確認した。土壌生成的には, 地形的に安定な斜面上部の土壌において, 粘土の断面内移動 (レシベ化) が認められること, また酸化鉄の形態分析から, 材料の風化の程度が下部よりも進んでいること, などが明らかになった。ただし, 粘土鉱物や全分析の結果は土壌間の材料の質や風化の程度の差を明らかにするのにあまり役立たなかった。