熱帯農業
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タンザニア南部, ビンガ県におけるマテンゴピット農法の植物残渣管理の重要性
森塚 直樹田中 樹角田 学Peter MTAKWA小崎 隆
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2000 年 44 巻 2 号 p. 130-137

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抄録

マテンゴピット農法は, タンザニアの在来農法である.それは, 雨季の短期休閑後, 格子状の畝内に雑草などの植物残渣を埋設し, 1年目にインゲンマメ, 2年目にトウモロコシを栽培するという2年を1サイクルとした輪作体系を持つ.この農法の大きな特徴は, 格子状の畝内に多量の残渣を埋設することである.そこで, 埋設された残渣の分解速度を調べ, 残渣の埋設が作土の肥沃度に及ぼす影響を評価するために, マテンゴピット農法下の耕地でリターバッグ法による残渣埋設試験と土壌分析を行った.植物残渣を封入したリターバッグを畝内に埋設し, 108日後と132日後に回収した.埋設残渣試料には, 3種類の雑草 (Pteridium aquiliumL, Imperata cylindrica L., Nidoyella yesedifolia L.) とトウモロコシ (Zeamays L.) を用い, その重量及び養分含量を測定した.その結果, 残渣試料の初期養分含量は, P.aquilium, N.yesedifoliaの葉が高く, トウモロコシの茎が低い値を示した.この養分含量の相違が埋設後の窒素放出速度に影響を及ぼしており, 養分に富む残渣は, 窒素放出速度も大きい傾向にあった.さらに, 埋設残渣の重量が分解に伴って指数関数的に減少すると仮定した場合, 埋設残渣の分解は輪作1年目にほぼ終了した.また, 土壌分析の結果, 残渣埋設を伴う深耕によって, 作土の肥沃度と厚さが長期間保たれてきたと考えられた.

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© 日本熱帯農業学会
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