熱帯農業
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形態的形質およびRAPD法によるヤムイモ (Dioscorea spp.) の種の分類と系統の区分
志和地 弘信遠城 道雄林 満
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2000 年 44 巻 4 号 p. 229-237

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抄録

葉, 茎およびムカゴの形態的形質によってダイジョ (D. alata) とナガイモ (D. opposita) およびジネンジョ (D. japonica) は判別されたが, ナガイモとジネンジョにおいては, 形態の形質で判別が不可能な系統があった.両種はRAPD法によって判別が可能であり, ヤムイモの種の分類にRAPD分析の適用が有効であることがわかった.
形態的形質とRAPD法を基にしたクラスター分析では, 3種の系統樹が非常に類似したが, ダイジョの系統は, 形態的形質では大まかに3群に区分され, RAPD法では5群に区分された.RAPD分析の区分と形態的形質による区分とが一致しない場合もあったことから, RAPD法による系統の区分には, 系統の特異的なマーカーの検出が不可欠であると推察された.
葉脚や葉柄基部に発現するアントシアニンの有無は, ジネンジョやダイジョの系統を大まかに区分する指標になりうるが, 系統の詳細な区分には他の指標と組み合わせる必要があろう.
インドネシアの系統には, 日本の在来種, ミクロネシアおよびオセアニアの系統に類似のものも存在することから, インドネシアはダイジョの遺伝的変異が大きい地域と推察され, 分析結果から, 日本の在来種は東南アジアから導入された可能性が大であると推定された.

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