2022 年 59 巻 720 号 p. 86-93
標準活性汚泥法にりんの除去のため凝集剤を添加する方法である凝集剤添加活性汚泥法の反応槽において,反応槽前半部の送風量を抑制し,汚泥返送比を上昇させることによる窒素除去率への影響を検討し,検討前の期間も含め計8年間のデータを整理することによりその有効性を検証した。この2つの運転操作を行うことにより反応槽の前半部のDOが0.2mg/L前後の状態となった際に,見かけ上,アンモニア性窒素の状態で濃度が低下する挙動がみられ,同時硝化脱窒が起きていると考えられた。8年分のデータからは霞ケ浦浄化センターでは汚泥返送比を50%以上としたときに窒素除去能力が高くなり得ることがわかった。一方,反応槽前半部の風量を抑制しても汚泥返送比が低いときや,汚泥返送比を55%前後にしても反応槽後半部にあるDOセンサーの設定値を高めにした場合には窒素除去能力が上がらないこともあった。汚泥返送比の設定が反応槽前半部のDO環境に影響し,脱窒の促進を左右している可能性が考えられた。本検討により運転管理の工夫のみでも窒素除去率を60%以上に引き上げることが可能であることが確認された。