抄録
通常の水道原水の主たる有機成分であるフミン質類の塩素処理水の変異原性をRec-assay法により検討し, 次のような結果を得た。1) 注入塩素量と原水のフミン質TOCの比率 (Cl2・TOC-1) が1~10の条件下でDNA損傷性が確認され, その強度はCl2・TOC-1が大なるほど高まる傾向がみられる。2) DNA損傷性の程度は, 強力な変異原性を示すマイトマイシンCによるDNA損傷性と比較した場合, R50の値については大きな差はないが, C50Rec-の値についてみると103も多量の試料を必要とする。3) 塩素化反応後のフミン質はDEAEセファデックスA-25を用いる陰イオン交換クロマトグラフィーにより3群に分画され, 最初に押出される陰イオン性の弱い画群1はCl2・TOC-1の増大とともに増加する。4) DNAに損傷を与える成分は画群1の中でもジクロルメタン抽出可能な疎水性低分子成分であると推論された。