1988 年 11 巻 12 号 p. 783-789,754
水を溶離液とし, Sephadex G-15を用いて下水処理水中の有機物のゲルクロマトを行う際, 無機塩, 特に無機陰イオンのおよぼす影響について研究を行った。その結果は次のようなものであった。
(1) 有機物のゲルクロマトグラフィーに及ぼす無機塩の影響は, 原理的には Posner によって提案された, Salt boundary technique と同じであった。しかし本研究では複数の bourdary か認められた。
(2) 無機塩は, ゲル表面の静電排除効果を抑制しているものと推察される。
(3) 試料が無機塩を含んでいてもいなくても, 水を溶離液として水中有機物のゲルクロマトグラフィーを行うことにより分子量分布を測定する方法には限界があると考えられる。
(4) 水中有機物によって水質評価を行う際には無機塩の影響を考慮する必要がある。