都市ごみ焼却炉集じん装置で捕集されるばいじん (集じん灰) は, 最終処分の前に, 薬剤処理などの安定化処理を行うことが法律で定められている。薬剤処理法においては, 薬剤使用量の適正化のためにも, 集じん灰中重金属固定の影響因子の解明が必要である。
本研究では集じん灰から高濃度で溶出する鉛 (Pb) に注目し, 次の調査および実験を行った。始めに, 3つの焼却施設を対象に, 発生した集じん灰を経時的に採取して金属含有量と溶出濃度を調査した (経時変動調査) 。次に, 採取した集じん灰試料に, キレート剤, pH調整剤および金属塩化物などを様々な条件で添加して環境庁告示13号溶出試験を行い (薬剤添加実験) , キレート剤によるPb固定に影響する因子について考察した。
その結果, 経時変動調査では金属含有量や溶出濃度の変動の傾向は採取日や施設によって異なった。薬剤添加実験では, キレート剤単独で処理を行う場合, Pb固定に必要なキレート添加量は集じん灰中のPbと銅 (Cu) の含有量に依存していることが明らかとなった。また, キレート剤とpH調整剤の併用処理を行う場合, Pbの埋立判定基準 (0.3mg/L) を満足するには, 溶出液のpHが9~10となるようにpH調整剤を添加する必要があった。