廃棄物学会論文誌
Online ISSN : 1883-163X
Print ISSN : 1883-1648
ISSN-L : 1883-1648
論文
甘藷および麦焼酎蒸留粕で作られた蘇生紙の物理・力学的特性と廃液性状の比較検討
山内 正仁平田 登基男松藤 康司増田 純雄前野 祐二三原 めぐみ米山 兼二郎
著者情報
ジャーナル フリー

1999 年 10 巻 5 号 p. 284-292

詳細
抄録

2001年以降, 海洋投棄が禁止される産業廃棄物である焼酎蒸留粕 (以下, 焼酎粕) の陸上での処理・処分は大きな問題である。筆者らは, その問題解決法の一つとして, 甘藷焼酎蒸留粕 (以下, 甘藷粕) から蘇生紙が作製できることを明らかにした。しかしながら, 蘇生紙の原料である甘藷粕はサツマイモの収穫時期である9月から12月に集中して発生し, そのため, 原料の供給が一時的であり, 年間を通しての蘇生紙作製が困難である。そのことは, プラントを操業する上で効率が悪く, 不経済である。一方, 麦焼酎蒸留粕 (以下, 麦粕) は年間を通して定常的に発生しており, その量も非常に多い。
そこで本論文では麦粕の場合にも蘇生紙が作製できるかどうか検討した。その結果, 麦粕でも蘇生紙作製が可能なことを見出した。また, 甘藷粕と麦粕による蘇生紙の物理的・力学的特性を比較し, さらに, 試料 (焼酎粕+古紙) 加圧時に排出される廃液性状についても種々検討を行い, 以下のような知見1を得た。1) 麦蘇生紙は甘藷蘇生紙に比較して密度は大きいが, 強度は弱い。2) 焼酎粕の粒径分布は, 甘藷粕では粒径の違う粒子で構成されているが, 麦粕は粒径の小さい均一な粒子で構成されている。
3) 加圧工程で廃液を出さないためには麦粕の場合, 廃液と古紙混合比の関係から甘藷粕の約1.7倍の古紙が必要であることが推定された。4) 古紙混合比1%で蘇生紙を成型すると, 廃液中のCODcr, TOC, T-N成分を甘藷粕の場合70%以上, 麦粕の場合45%以上除去することができる。

著者関連情報
© 一般社団法人 廃棄物資源循環学会
前の記事 次の記事
feedback
Top