抄録
近年のリサイクル向け廃棄物の国際移動の増加傾向という問題に対する評価および対応の検討に資することを目的として, 関係する各種政策理念, すなわちバーゼル条約の全面輸出禁止改正を巡る推進および慎重両論の理念, 経済のグローバル化を背景とするグローバルな物質循環という理念, さらに, 拡大生産者責任の理念の本問題への潜在的影響を考察し, 相互関係を分析した。同改正を巡る推進および慎重の理念が, 前者は発生抑制を, 後者はリサイクルを強調して対立する中, グローバルな物質循環の理念もリサイクルを目指すものであり, この対立を解消するものではない。拡大生産者責任に従った一定の国際移動が発生抑制の効果を持つならば, この対立構造を変更する可能性があるが, この効果についてはさらなる研究が必要である。したがって, 有害廃棄物に該当する物の国際移動は引き続き極力抑制しつつ, 右の発生抑制効果などに関する研究を深めていくべきである。