薬剤処理は都市ごみ焼却飛灰や溶融飛灰中重金属の溶出抑制処理の主流であるが, 薬剤の長期効果を十分確認することが必要である。本研究では3種類の液体キレート剤を用いて都市ごみ焼却飛灰をキレート処理し, 乾燥化と空気接触の条件を組み合わせて最長68日間の養生を行った後に環告13号溶出試験を実施した。このことにより, キレート処理飛灰からのPbなど重金属再溶出の可能性とその要因の解明を試みた。
その結果, 乾燥化と空気接触を防止するため密閉容器に窒素ガスを充填し養生した灰からのPb溶出濃度は0.1mg/L以下を保ったが, それ以外の条件ではPbが再溶出し, 早い場合は養生開始から7日後に埋立判定基準0.3mg/Lを超過した。キレート処理は即効性に優れるが, 適切な条件が維持されなければPbが再溶出する懸念がある。再溶出の機構として, TOCとPbの溶出濃度の変化が一致しないことから, 一部のキレート剤については重金属キレート錯体の微細化ではなく錯体の化学的分解である可能性が示唆された。一方, 湿潤状態を保持した条件ではキレート剤添加の有無によらずPb, ZnおよびCaの溶出濃度が減少し, 飛灰中の結合水量 (105℃で蒸発されない水分量) が次第に増加する現象が観察された。