2005 年 16 巻 4 号 p. 256-265
本稿では, 廃棄物広域処理施設の設置計画における行政と住民のコミュニケーションによって, 住民の選好がどのように形成されていくかに注目した。岩手県において仮想的な廃棄物広域処理施設の設置に関する住民懇談会を開催し, その中で施設設置に関する住民の選好の定量的な変化について分析した。懇談会の中では, 県職員による情報提供や質疑応答, 県職員と懇談会参加者との議論を行い, その過程で3回の選択型実験を行った。分析の結果, 詳細な情報提供や質疑応答を含む議論によって, 広域処理に対する理解が深まり, 産業廃棄物の受入れに対する抵抗感が緩和されるなど, 人々の選好が変化することを確認した。このことは, 処理施設設置に関する合意形成を行う際の, 行政と住民のコミュニケーションの重要性を示唆しており, 設置計画段階における住民参加によって, 住民の理解を得ながら施設設置を行うことが可能となりうることを示している。